社説

ゲノム編集規制 拙速な結論避け慎重に

09/03 05:00

 動植物の遺伝子を改変する新手法「ゲノム編集」を巡り、環境省の専門委員会が、一部を規制対象外とする方針を了承した。

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 生物が本来持たない遺伝子を外から組み込む場合は、遺伝子組み換えと同様、環境への悪影響を防ぐための法律で規制する。

 一方、もともとある遺伝子を壊して機能を失わせる場合は規制対象とせず、不測の事態に備えて情報提供を求める。

 対象から外したのは、機能喪失による改変は自然界の突然変異でも起き得るとの理由だが、人の手が加わったゲノム編集を同列に扱うのは無理があるのではないか。

 専門委の検討会がたった2回の会合で原案をまとめた点も、拙速な印象を拭えない。

 流通が始まって20年以上たつ遺伝子組み換え食品への消費者の抵抗感は根強い。食料基地・北海道にとっても極めて重要な問題だ。

 もっと丁寧で開かれた議論を尽くさなければならない。

 遺伝子組み換え生物は、国際的な枠組みに基づく「カルタヘナ法」や食品衛生法で規制され、環境への影響を評価し、国の審査を受ける必要がある。

 一方、ゲノム編集は、外部の遺伝子を使わなくても、酵素で狙った遺伝子を切断して改変できる。遺伝子組み換えより精度が高く効率もよいとされる。

 例えば、筋肉の増えすぎを抑える遺伝子を壊せば、養殖マダイの肉付きがよくなる。

 今回、検討会は、これをカルタヘナ法の規制外としたが、ゲノム編集はまだ歴史が浅い。現に、遺伝子切断で予期せぬ変異が起きたとの報告もあり、環境に対する悪影響の可能性は否定できまい。

 政府は6月、技術革新を進めるための統合イノベーション戦略を決定し、食品を含め、ゲノム編集生物の法的な取り扱いを本年度中に明確化するよう求めた。

 この方針に沿って、環境省や厚生労働省が作業を進めているが、遺伝子改変という問題の性格を考えれば、性急すぎないか。結論を急ぐのは開発者側の都合だろう。

 自然界や健康への影響はもちろん、仮に規制を緩めるとしても、消費者の選択を保障する表示方法など課題はあまりに多い。

 ゲノム編集生物の規制について各国の判断は分かれているが、欧州連合(EU)の司法裁判所は、機能喪失も含めて規制対象とすべきとの判断を示した。

 日本政府にもEUと同様の慎重さが求められる。

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