社説

自民党総裁選 内向きではない論戦を

09/02 05:05

 7日告示の自民党総裁選は、野田聖子総務相が推薦人を確保できず出馬断念を表明し、安倍晋三首相と石破茂元幹事長による一騎打ちが事実上確定した。

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 3年前の総裁選は無投票だったため、選挙戦は野党時代の2012年以来だ。安倍政治の継続か否かを問う本格論戦を望みたい。

 しかし議員票で優位に立つ首相は地方視察を続け、党員票固めに余念がないものの、次の国会に党の憲法改定案を提出すること以外は具体的な政策の発信に乏しい。

 石破氏が求めていた政策テーマごとの討論会も見送られた。

 このままでは国民の前で互いの主張を戦わせ、日本の針路を巡る議論を深めることにつながらず、内向きの凡戦に終わりかねない。

 石破氏は先週、アベノミクスに対抗し地方創生と社会保障制度の再構築で消費を喚起するなどの公約「石破ビジョン」を発表した。

 挑戦を受ける首相は、今後3年の政権運営の展望とともに、石破氏の主張に対する見解や反論を具体的に語る―。それが論戦の質を高めていくことになるが、残念ながらそうなってはいないようだ。

 先週の出馬表明はテレビカメラを前に質問をほとんど受けない事実上の言いっ放しで終わり、その後も記者会見を開いていない。

 作成した政策ビラは訪日観光客の目標4千万人など従来の路線を踏襲、あとは政権の6年間で改善した経済指標などを列挙した。

 岸田派は来年10月の消費税率10%への引き上げの確実な実施と、20年代前半までの財政健全化に全力を挙げるよう首相に提言した。

 こうした重要論点こそ、首相自身が方向性を示すべきである。

 麻生派は、来年夏の参院選までの改憲の国民投票実施を求めた。

 だが共同通信の世論調査では、首相が掲げる改憲案の次期国会提出すら、賛成36・7%に対し反対が49・0%と大きく上回った。

 国民の理解を得られていない改憲を総裁選の目玉公約にすること自体、内政・外交で新たな旗印に乏しいことの裏返しではないか。

 一方、石破氏が掲げる「正直、公正」のキャッチフレーズに対して、支援に回った参院竹下派の吉田博美参院幹事長は森友・加計問題を念頭に置いた首相への「個人攻撃」に映ると苦言を呈した。

 森友・加計問題を巡る首相の政治姿勢は、引き続き問われなければならない。政権のイメージダウンを恐れて議論を矮小(わいしょう)化するようなら、総裁選の意義が大きく損なわれてしまう。

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