北海道

シカによるJR運休・遅れ頻発 昨年度最多、防止策も不発

08/30 05:00
シカによるJR運休・遅れ頻発 昨年度最多、防止策も不発
  • シカによるJR運休・遅れ頻発 昨年度最多、防止策も不発
  • JR根室線落石―別当賀間で線路上に現れたシカの群れ(JR北海道提供)

 エゾシカの線路侵入に伴うJR北海道の列車の運休と遅れが2017年度、計116件に上り、統計を取り始めた1987年度以降で最多だったことが、同社への取材で分かった。本年度も既に前年度を上回るペース。背景にはシカの生息域の拡大などのほか、JRが脱線防止に向けて車輪の傷の整備基準を厳しくしたことがある。例年、秋以降は繁殖のために行動が活発化し、衝突が増える傾向にあるだけにJRは頭を抱えている。

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 JRはシカの侵入が原因で運休、遅れ(30分以上)が出たケースを1件として数えており、100件を超えたのは初めて。今年4~6月も既に14件と前年度同期を3件上回っている。

 道によると、2000年度に35万頭だった道内のシカの推定生息数は、ピークの10年度に約2倍の68万頭に達した。これに連動し、列車とシカの衝突件数は1995年度に500件を突破し、2012年度には2376件に達した。

 道などが10年度から捕獲を強化した結果、17年度には45万頭にまで減ったが、衝突件数は1747件と高水準のままだ。今年も4~6月の衝突件数が344件と前年同期を16件上回る。衝突のうち、実際に運休や30分以上の遅れにつながる例は一部だが「他の野生生物と比べて桁違いの多さ」(JR広報部)という。

 衝突件数が劇的には減らない理由は、森林の草地化などによって生息域が広がり、シカが線路を横断する機会が増えたためとみられている。実際、発生場所は山間部を走る宗谷線(旭川―稚内間)が全体の4割を占めるものの、近年は都市部でも起きている。6月13日には千歳市の千歳線長都―千歳間で快速エアポートがシカと接触し、列車10本が運休している。

 一方、運休・遅れの件数増加については、JRが11年の石勝線の特急脱線炎上事故を受け、車輪の整備基準を厳格化したことも影響している。事故以前は長さ7・5センチ以上の単体の傷を修理対象としていたが、事故後、周辺の傷を含めて合計で7・5センチ以上になる場合も対象に加えた。

 列車の運転士は線路上でシカを見つけた際、非常ブレーキをかけるため、車輪に傷がつきやすい。衝突を避けることができても、基準に基づいて修理に出さざるを得ないケースが増えているという。

 JRはシカ対策として17年度までに10億円を投じて侵入防止柵を設置した。ただ、総延長は103キロと、宗谷線換算で4割にとどまる。巨額の費用がかかることから、13年に根室市の根室線別当賀(べっとが)―落石間で、大型動物が近づくとライオンの鳴き声などを流し追い返す装置の導入を試みた。だが、「シカは2、3年で慣れてしまい、効果はなくなった」(広報部)。

 野生動物の交通事故に詳しい一般社団法人北海道開発技術センター(札幌)の野呂美紗子主任研究員は「生息数が減っても、シカの生息密度にはムラがある。JRだけの対策には限界があり、道などと情報共有し、頻繁にシカが出没する地点に重点的に柵を設置するなどの対策をとるべきだ」と指摘している。(吉田隆久)

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