社説

防衛白書 文民統制、徹底欠かせぬ

08/29 05:00

 自衛隊に対する国民の信頼は、文民統制(シビリアンコントロール)が徹底されてこそ得られる。

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 しかし防衛省・自衛隊にその意識は乏しい。きのう公表された今年の防衛白書は、それを反映した内容だった。

 昨年以降、文民統制を揺るがす事案が次々発覚した。陸上自衛隊の海外派遣を巡る日報の隠蔽(いんぺい)や、幹部自衛官による国会議員への暴言である。

 白書ではその反省が十分に触れられていない。日報問題は末尾に約4ページ記載しただけで、暴言自衛官の記述はまったくない。

 文民統制への懸念を生じさせた背景の分析と改善策をしっかり説明するのが白書のあるべき姿ではないのか。これでは失った信頼を取り戻す気があるのか疑わしい。

 防衛省・自衛隊は文民統制をどう徹底するのか、明確な形で国民に提示しなければならない。

 防衛省は南スーダンとイラクに派遣した部隊の日報について、当初存在しないと説明していたが、後に見つかったり、データが消されたりしていたことが判明した。

 白書では再発防止策として、日報の保存期間を10年と定め、情報公開査察官の新設によるチェック機能の強化などを列挙した。だが、職員の意識向上といった抽象的な項目も少なくない。

 安倍晋三政権は2015年に防衛省設置法を改正し「制服組」と、「背広組」と呼ばれる内部部局の官僚を対等に位置付けた。

 この制服組の権限強化で組織のチェック機能が低下していないか、改めて検証する必要があろう。

 白書はまた北朝鮮の核・ミサイル問題に関し「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と昨年より表現を強めた。

 その上で地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」導入の必要性を強調している。

 しかし、北朝鮮問題はこの1年間で大きく動いた。米朝は首脳会談で北朝鮮の非核化で合意した。一方で、核開発は継続しているという情報もあり、状況を断定するのは難しいのが実態だ。

 にもかかわらず「危機」を強調するのはイージス・アショア導入ありきの言い分と見られても仕方ない。

 白書では中国の海洋進出も詳述し、防衛力強化の必要性を指摘した。しかし、防衛省に最優先で求められるのは襟を正すことだ。

 自衛隊の最高指揮官である首相は、そのための指導力が問われている。

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