フォーカス

「ご飯論法」法政大・上西充子教授に聞く 「国会が終わってもなかったことにはならない」

08/28 05:00

 「朝ごはんは食べなかったんですか?」

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 「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」

 意図的な「論点ずらし」や「はぐらかし」など、不誠実な国会答弁の手法「ご飯論法」を広めた法政大学の上西充子教授らが、国会審議の様子を街頭で上映する活動に取り組んでいる。8月28日の北海道新聞朝刊3面<フォーカス>首相答弁に「異議あり」 市民ら発信活発化に関連して、上西教授のインタビュー詳報を掲載します。


インタビューに答える上西充子法政大教授
インタビューに答える上西充子法政大教授

国民はバカにされている

 今の国会審議は理屈が通らない世界なんです。「おかしいでしょ」と言って、「はい、すいませんでした」には全然ならない。この状況について、より多くの人たちに国会について問題意識を持ってもらいたいと思っています。

 私は労働問題の専門家として、働き方改革関連法の法案審議にずっと注目していました。加藤勝信厚生労働相は野党の質問に対して、ずっとはぐらかし答弁を続けていた。でも「記憶にございません」など分かりやすい答弁拒否はしない。全然答えていないのに、ちゃんと答弁したかのように答弁するんですね。

 「朝ごはんを食べなかったのか」と聞くと、加藤氏は「ご飯は食べていない」と答える。でも本当は白米を食べてないだけで、パンは食べている。聞いた人は朝ごはんを食べていないと思ってしまう。もちろんこれは例え話ですが、このように論点をすり替えて聞かれていないことを答える答弁が、政府全体にまん延しているのではないでしょうか。ごまかせば何とかなると思っている節がある。国民はバカにされていると思った方がいいですね。

映像なら政府の答弁姿勢伝わる

 ご飯論法はメディアで紹介されましたが、ひどい国会審議は続きました。私は働き方改革関連法の問題点を整理してネットの記事に書きましたが、長いのでなかなか読まれない。でも映像なら政府の答弁姿勢が端的に伝わります。ツイッターで街頭上映ができないかと呼び掛けると、多くの人が協力を申し出てくれました。ネットで機材購入の費用などを募ると、1日で60万円が集まりました。

東京都内の街頭で行われた、国会審議を上映する活動
東京都内の街頭で行われた、国会審議を上映する活動

 最初は国会審議の映像を流し、私が1人で解説したり、野党の国会議員と一緒に解説したりすることもありました。でも野党と一緒に活動すると、聞き手には「一方の見方」に映ります。その政党の支持者は立ち止まるかもしれないけど、政治に無関心な人はなかなか立ち止まらない。そこで審議の映像の間で私が問題点を解説する動画を作りました。そうすると結構立ち止まってくれる。何十分間も見てくれる人もいます。「野党は批判ばかりしている」と言われますが、動画をじっと見ていた人の中には「審議を見たら野党も意外にちゃんとやっている」と思う人もいるのではないでしょうか。


各地の取り組みとノウハウ共有を

 私は国会審議自体に絶望しているわけではありません。昨年3月の改正職業安定法の審議で参考人意見陳述を行いましたが、私の指摘に対して当時の塩崎恭久厚労相が理解を示し、法律の運用指針で対策を取りました。国会審議はかみ合うと意味があると実感しました。だからこそ、国会を正常化したいと考えているのです。

 私のもとには働き方改革関連法だけではなく、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法などほかの法律も取り上げてほしいという声が寄せられています。しかし私はカジノに詳しくなく、同じように取り上げることは無責任です。スタッフには仕事もあり、頻繁に各地に出向くこともできません。

 ただ、団体のホームページでは、プロジェクターやスクリーンなど必要な機材を紹介しているほか、上映に警察の許可がいらないことなども説明しています。映像は動画配信サイト「YouTube(ユーチューブ)」で公開しているほか、ダウンロードもできます。ノウハウを共有し、各地の自主的な取り組みを後押ししていきたいと考えています。

 首相や閣僚、官僚が答弁から逃げて、論点をずらして、まともに答えなかった。こんな国会があったことを多くの人に知ってもらうことに意味があると思います。国会が終わったからと言って、なかったことにはならないのです。

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