北見オホーツク

<1>告知を受ける 治療のリスクに動揺

09/03 05:00
「説明と同意」を意味するIC。患者は症状に関するさまざまな資料を渡され医師の説明を受けることが多い(写真はイメージです)
「説明と同意」を意味するIC。患者は症状に関するさまざまな資料を渡され医師の説明を受けることが多い(写真はイメージです)

 家庭を築き、仕事もこれからという時、がんになったら…。今年「精巣がん」と判明し、4カ月後、職場に復帰した北見報道部の和賀豊記者(36)が、手術や薬物治療による闘病経験や復帰後の生活を通じ、若年層の目線からがんとの向き合い方について考えた。

[PR]

 痛みはなかった。1月18日、出張先の網走のホテルの大浴場で、右の睾丸(こうがん)が左より一回り大きく、硬くなっていることに気付いた。

 状態は数日変わらず、スマートフォンで検索すると、精巣がんと、陰のうにリンパ液がたまる「陰のう水腫」の2種類に絞られた。

 大学まで野球部に所属し、体力には自信があった。妻の食事のサポートもあり健康に気を配っていたつもりだ。2人の子はまだ小学生。「30代でがん? 治るのか」。その夜は一睡もできず、ひたすら検索した。

 国立がん研究センター(東京)によると、精巣がんになる男性は10万人に1人程度の珍しいがん。20~30代の若年層の発症が多いのが特徴で、生活習慣やストレスとの関係は不明だ。

 1月26日、北見赤十字病院で精密検査を受け、精巣がんとほぼ確定。「やはりか」と動揺はなかった。精巣を病理検査して治療方法を決めるため、29日に手術。その結果が出た2月9日、告知を受けた。患者が医師から十分な説明を受け同意した上で治療にあたる「インフォームドコンセント(IC)」の形だ。

 他臓器への転移がないステージ1だが、静脈にがん細胞が広がる「浸潤」があり抗がん剤治療が必要と言われたことは受け止めた。ただ「わずかだが薬が原因の肺炎で亡くなる人もいる」といった抗がん剤治療の副作用の説明はこたえた。

 ICは1997年の医療法改正で医師の努力義務として明記され、患者の決定権を尊重するとの考え方から広まった。元々は医療過誤が多発した米国で裁判対策として生まれた理念だ。

 患者には、起こりうる全てのことを伝えるべきなのか。臨床医歴37年の同病院の主治医に疑問を投げかけると「患者があらゆるリスクを理解していた方が体調変化にすぐ気づき、早い対処につながる」と答えた。

 発生した臓器が不明のがんで、6月に44歳で死去した富永浩史さんの妻陽子さん(42)=北見市=は「夫は説明してもらって良かった」と振り返る。告知は余命3カ月から半年。延命治療もできたが「家族や仲間と穏やかに過ごしたい」と緩和ケアを選択し、思い出の地、山口県へ旅行した。

 病状が深刻なほど、全て伝える意味があると感じる。ただ私には受け止める心の準備がなかった。患者に死や病気と向き合う姿勢がないと、ICでも納得できる治療は難しいのかもしれない。(5回連載します)

ページの先頭へ戻る