社説

公務員定年延長 官民格差 広がらないか

08/22 05:00

 人事院は国家公務員の定年を60歳から段階的に65歳まで引き上げるよう国会と内閣に申し入れた。

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 少子高齢化で若年層の労働人口は減っている。人材確保が難しくなる中、意欲と能力のある高齢者が活躍できる環境を整えるのは官民共通の課題である。

 しかし、定年延長を採用する民間企業はまだ2割に満たず、大半はいったん定年退職してから継続雇用する制度で対応している。

 こうした実態を踏まえなければならない。

 民間での定年延長導入の環境が整わぬまま、公務員だけ先行すれば、労働環境の官民格差を助長する恐れもある。

 当然ながら、不公平感を生じさせない対策が前提だ。

 年金支給開始年齢が65歳まで引き上げられることに伴い、国家公務員の60歳定年後の採用制度として、希望者全員を「再任用」することが義務化されている。

 本年度の再任用は約1万3千人で、この5年で2倍に増えた。公務員は安易に定員を増やせないため、再任用の8割が短時間勤務で係長・主任級が7割を占める。

 こうした給与の大幅減や地位の低下によって職員の不満が増し、行政サービスの低下を招きかねない、と人事院は指摘する。

 定年後の給与減少は民間も同じだ。これらを理由に公務員だけ定年延長を急ぐことは国民の理解は得られまい。

 人事院は定年延長による総人件費の増加を抑制するために「賃金カーブの見直し」や「役職定年制の導入」も求めた。いずれも定年延長に関係なく、導入すべき仕組みと言えよう。

 また60歳超の給与については民間に合わせ、60歳以前の7割の水準とするよう提言した。

 だが、基になった給与調査は60歳以降も正社員として雇用されている人が対象で、優良企業が多いとみられる。全体としては、嘱託やパートなどで再雇用されるケースが多いのが実情だろう。

 7割が妥当かどうか疑問が拭えない。拙速を避け、慎重に検討する必要がある。

 経営体力の弱い企業が多いことも、民間で定年延長が進まない背景にあり、政府による支援策も求められる。

 今年春の新人公務員アンケートでは、定年まで勤めたいと答えた人は46%で、残業を減らす必要性を指摘した人は60%に上った。

 安定的に人材を確保するには長時間労働の是正も急務だ。

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