室蘭胆振

<第8部 卸売市場かいわい>9 競り人 「高く売る」一発勝負

08/21 08:55
一般の人には聞き取れないほど速い掛け声で競りをする嶋尾祥規さん(右から2人目)
一般の人には聞き取れないほど速い掛け声で競りをする嶋尾祥規さん(右から2人目)
  • 一般の人には聞き取れないほど速い掛け声で競りをする嶋尾祥規さん(右から2人目)
  • 本格的に競りをするようになって3年の松岡諭さん(左)。「高く売れると達成感がある」と話す
  • 新鮮な魚が並ぶ室蘭市公設地方卸売市場。午前7時から競りが始まり1時間ほどで終わる

 ジリリリリリリリ。午前7時、新鮮な魚がずらりと並ぶ室蘭市公設地方卸売市場(日の出町)に、競りの開始を告げる音が鳴る。競り人が登場し、品定めをしていた仲買人が集まる。

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 「ヒラメー!」「スケソー!」と、競り人が大声で叫ぶ。魚種別の競りが2、3カ所で同時に始まった。

 「3千、2900、2800…」。競り人が価格を徐々に下げる「下げ競り」だ。仲買人が購入したい価格で「はいっ」と声を上げ、売買が成立していく。

■緊張で体震える

 「漁師から魚を預かる際に『頑張ってね』と言われると、1円でも高く売りたいと気合が入るよ」と、一仕事終えた若手競り人の松岡諭さん(31)。道東海大で海洋環境学を学び、魚に関わる仕事をしたいと、同卸売市場で競りを担う室蘭魚市場に就職した。

 自分のひと声で、時に数十万円の取引が決まる。「最初は緊張しすぎて、先輩から『体震えているぞ』と指摘された」という。

 重要なのは、最初に提示する価格だ。低いと、良い値で売れない。高いとなかなか買い手が出ず、時間がかかって場がしらける。

 他の市場の相場も頭に入れ、競りに臨む。場の雰囲気も大事なヒントだ。いつも談笑している仲買人がやけに集中して真剣だと、「高く売れるかも」と読む。

■やり直しは「恥」

 競り歴30年のベテラン嶋尾祥規(さちのり)さん(51)は「競りを任せて大丈夫と、仲買人に信頼してもらうことが大事」と語る。競りをやり直す「ふき直し」は、「何度もやれば進まないし、相手からも不信感を持たれる。競り人の恥」と説明する。

 だが、「ふき直せばよかった」と後悔したこともある。

 20代の頃、高値が付く年末に、相場を読み違え4割ほど安い価格で決まった。「上司からはみっちり説教。胸ぐらつかまれ、怒られたこともある」という。

 嶋尾さんの掛け声は速い。耳を澄ませても、たまに数字を聞き取れるくらい。でも「店への納品時間が決まっているので、競りは早く終わるのがいい」(仲買人の大西洋一さん)と、評判がいい。嶋尾さんは「先輩のかっこいい発声や間の取り方を見て聞いて覚えたんだよ」と笑う。

 最近は「入札」も増えつつある。仲買人が紙に価格を記入し、最高値をつけた人が確実に購入できる方法だ。活気ある競りとは異なり、仲買人の間には互いを探り合う緊張感が漂う。

 室蘭ではスケソウダラに加え、今年から毛ガニも入札に変えた。仲買人からは「周りの様子が分からず難しい。まさに心理戦」と、まだ戸惑いもある。

 食卓に当たり前のように並ぶ魚。その裏では毎朝、市場でさまざまな駆け引きが繰り広げられている。

豆知識 嶋尾祥規さんから
■秋サケ

 9月に入ると秋サケの漁が始まります。胆振管内は昨年度、過去最低の不漁でイクラが高騰しましたね。今年の来遊予測は全道で昨年の約2倍と言われています。10月から卵が成熟してくるので、家庭で生筋子からイクラのしょうゆ漬けに挑戦してみてください。秋サケの身は脂が乗っているというよりサッパリしています。おいしさを見分けるのは大きさ。切り身でも大きいものを選んでくださいね。地元で取れたサケは新鮮ですよ。

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