卓上四季

夏休みの子ども

08/19 05:00

「算術の少年しのび泣けり夏」。新興俳句の旗手、西東三鬼が戦前に詠んだ代表作の一つだ。「愚息は父に似て数学的頭脳を持っていない。宿題が出来ないで一人シクシク泣く」と自ら解説している。手伝ってやったのだろうか▼道内は、きょうで夏休みの終わる小学校が多い。子ども時代を振り返れば、放っておいた宿題もいよいよ年貢の納め時。8月下旬は時の逃げ足が速かった▼自由研究、読書感想文、日記。「夏休みの友」や「夏休み帳」という名のドリルは、朝顔や麦わら帽子などが描かれた表紙も懐かしい。ただし、泣きながら頑張る根性はなく、やり遂げたことはめったになかったけれど▼研究や作文は切羽詰まり、級友たちと図書館で本を丸写しする始末。子どもの目にもそっくりな文章を、先生はどう思ったろう。耳をそろえて宿題を出したことは一度もないが、ひどくしかられた覚えもない▼詩人のまど・みちおさんに楽しい話がある。詩人の川崎洋さんが、新聞で子どもの詩の投稿欄の選者を務めた時、まどさんの詩を書き写した作品を選んでしまった。おわびの手紙を出すと、まどさんからの返信にはこう記されていたという。「これは本当によくあることで、私などは子供からラヴレターを貰(もら)った感じで嬉(うれ)しいくらいです」▼ひたすら遊んだ、あの夏の日々、周囲の大人がこんな気持ちで接してくれていたとしたら幸いだ。2018・8・19

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