卓上四季

終戦の日

08/15 05:00

学校で使う社会科や歴史の教科書は、太平洋戦争についてどう記していただろう。真珠湾攻撃や沖縄戦、原爆投下、ポツダム宣言受諾などの記述はある。けれど、飢えと空襲と病におびえながら、必死に当時を生きていた民衆の様子は、どこまで載っていたか▼戦場の戦いだけが戦争ではない、と改めて思い出させてくれる。暮(くら)しの手帖社が7月に出版した「戦中・戦後の暮しの記録」である。肉親を戦地に送り出す家族のつらさ、燃えさかる焼夷(しょうい)弾の熱さ、疎開先でのいじめや空腹―。そこには教科書では伝えきれない「戦争」がある▼同社が戦争体験者に投稿を呼び掛け、「戦争中の暮しの記録」を特集したのは1968年。半世紀を経て再び「記録」をまとめたのは、戦争の生き証人が減りゆく今が、その記憶を次世代に伝える最後の機会と考えたからだという▼「これが戦争なのだ。それを知っておきたい。君に知ってもらいたい」。同社編集部は、そう呼び掛ける▼「戦争の記憶が遠ざかるとき、戦争がまた 私たちに近づく」(石垣りん「弔詞」)。戦争を知らない世代は、日本の人口の8割を占める。歴史の「愚」を忘れてしまえば、再び繰り返す恐れがある。必要なのは記憶の継承だ▼かつて「もはや戦後ではない」と言われた時代があった。社会のきなくささが増す中、「もはや戦前だ」とならぬよう。平成最後の終戦の日である。2018・8・15

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