道新 夢さぽ

地域ぐるみで大卒採用・育成 異業種の「同期」と成長

08/31 17:50 更新
グループに分かれて活発な議論を繰り広げる人事採用関係の参加者
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 大学新卒者などの採用活動は札幌や東京のような大都市の合同企業説明会を中心に行われるケースが多い中、地域で採用から育成まで手掛ける新たな取り組みが東北から広がり、道内でも帯広市で始まった。企業にとっては地元での採用に弾みがつく一方、学生にとっては古里や気に入った地域に就職し、異業種の「地域の同期」と一緒に新人教育を受けながら共に成長していくことが期待されている。(道新夢さぽ取材班 青山実)

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■人材大手が研修支援

 「それでは新入社員をどう育てていくのか、互いに考えを説明して議論してみてください」。午前中に育成計画づくりの講義を受けた参加者は、講師の合図で三つのテーブルごとに実際に計画を作り、活発な話し合いを始めた。

 7月17日に帯広市内の建設会社で開かれた「マチリク」研修会。この日は企業幹部向けで、翌日、新入社員向け研修が行われた。

 「マチリク」とは就職支援サービス大手のリクルートキャリア(東京)の採用・育成の支援事業。地域の中小企業や行政と連携して進めており、街ぐるみでリクルーティング(採用・募集)を行うことを目指しているため「マチリク」と銘打っている。

 仕組みは、採用に意欲的な地域の複数の中小企業が育成も含めて共同で行う体制をつくり、実際の新入社員向けや企業向けの各種研修などはリクルートキャリアが担う。行政も広報サイトなどで活動を紹介し、UターンやIターンを促す。同社はこの狙いや効果について「企業は単独で行うよりも採用の機会が増え、学生は中小企業でも総合的な教育を受けられる一方、同じ地域で働く異業種の同期と一緒に成長できる。地域に定着した彼らがその街を成長させていく役割を果たしていく」と説明する。

■道内は十勝地区から

 「マチリク」は、東日本大震災の復興支援の一環として、宮城県気仙沼市で2016年にスタート。地元企業10社が新入社員10人を対象に共同で事業を始め、リクルートキャリアと気仙沼市が協力して育成を続けている。その後、久慈市(岩手県)、豊岡市(兵庫県)と続き、帯広市が4カ所目。同社は「帯広を中心とする十勝地区は、経済などで潜在的な力が大きく、発信の仕方で優秀な人材が集まりやすい」とみる。

 主催したのは十勝人事協議会で、市も共催。同協議会は06年に発足し、十勝管内に本社を置く25社で採用情報の共有や合同企業説明会などを開催している。会長の宮本慶一郎さん(43)=十勝三菱自動車販売=は「自前でいろいろ取り組んできたが、超売り手市場など環境が激変し、人材採用には専門的なノウハウが必要になった」と話す。

 初日の企業幹部研修会には9社の人事採用担当者13人が参加。大昭電気工業取締役総務部長の出村哲教さん(34)は「新人育成では、会社全体として共通イメージを持って育てていく必要性を痛感した」と話す。2日目の新入社員研修には31人が参加。陰山紘太さん(22)=釧路公立大卒、帯広地方卸売市場=は「異業種の同世代の人たちと話すと新鮮で刺激になる。研修後も会合を持ち、地域の仲間という意識が生まれた」と成果を語る。

 今後、帯広では長期的な構えで研修事業などを行っていく予定。リクルートキャリア北海道グループの村野苑美マネジャー(34)は「現在、道内では複数の自治体と同様の話を進めており、環境が整い次第、順次実施していきたい」と話す。道内の中小企業に詳しく、自らも大手銀行で採用担当の経験がある中小企業診断士の中野貴英さん(43)=札幌=は「リクルート系列の大手が地域支援を行うのは大きなインパクトがあり、学生の注目を集めやすい」とし、「採用育成と並行して企業の意識改革も進めることが新しい時代の人材の定着につながる」と指摘している。

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