発信

<北見 それでも産業用大麻に懸ける>上 法律の壁 事業化進まず

07/31 05:00
舟山秀太郎さん(右)が紹介する、はたきなど麻プロジェクトの産業用大麻製品
舟山秀太郎さん(右)が紹介する、はたきなど麻プロジェクトの産業用大麻製品

 高さ約3メートルの鉄製フェンスに囲まれ、出入り口には厳重にカギが掛けられた北見市郊外の畑で、同市の建設会社社長、舟山秀太郎さん(67)が種植えを準備していた。畑は産業用大麻の試験農場で、フェンスとカギは盗難防止のため。舟山さんは道内唯一の産業用大麻の栽培者免許保有者だ。

[PR]

■「有用な作物」

 2006年から試験栽培を始め、13年目。舟山さんは「植えたらほとんど手間が掛からない。秋の収穫時には人の背丈をゆうに超える」と栽培の魅力を語る。

 産業用大麻は麻薬成分テトラヒドロカンナビノール(THC)を0・3%未満しか含まない品種。欧米ではヘンプと呼ばれ、衣類や建材、燃料など幅広い分野で活用される。収量が多く、国内でも「有用な畑作物になる」と期待する関係者は多い。

 舟山さんら北見の産学官による産業クラスター研究会オホーツクが03年に「麻プロジェクト」を立ち上げて事業化を模索し、06年からは試験農場で育てた産業用大麻の繊維材ではたき、種の油でせっけんを試作。今年7月に初めて販売した。

 しかし、「事業化なんて進んでいません。特区には工場建設の計画も盛り込んでいたのですが」と舟山さん。当初は千ヘクタールでの栽培を目標としていたが、試験農場の面積はその1万分の1以下の7アール。さらに、舟山さんの手元にある産業用大麻の種は1年分のわずか40グラムで、農場の拡大どころか、今後の栽培さえ危うい。

■見えぬ先行き

 最大の壁は、大麻の所持や生産、流通を原則的に禁じる大麻取締法だ。麻薬成分をほとんど含まないとされる産業用大麻だが、海外からの種子の輸入は原則禁止。ヘンプ栽培の国内先進地の栃木県も県外への種子の譲渡を認めていない。北見で自家栽培した種を使うには、麻薬成分の含有検査などを受ける必要があるが、栽培・研究者免許の交付権を握る道が検査を認めないため、事実上不可能だ。

 「ヘンプと麻薬成分が高い大麻を明確に区分する施策があれば、さまざまな問題がクリアになる」。事業化の道を探る農家や研究者らでつくる道の北海道産業用大麻可能性検討会が5月下旬に札幌で開いた会合で、座長の松井博和・北大名誉教授は強調した。

 08年に北見市は、道の「産業用大麻栽培特区」に認定された。特区の計画書には北見の関係者の思いがこもる。「公共事業が減り、人口減少社会が到来した。地域経済の活性化を図るには、自立した経済構造に転換する必要がある」。その起爆剤となるはずのヘンプの先行きは見えず、現場にいらだちと焦りが交錯する。(北見報道部の菊池圭祐が担当し、3回連載します)

ページの先頭へ戻る