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<札幌 PMFへの道 バーンスタインの情熱>上 名声得たNY、教育にも力

07/24 05:00
バーンスタイン氏が家族らと撮った写真を前に父との思い出を語る長女のジェイミーさん=ニューヨーク
バーンスタイン氏が家族らと撮った写真を前に父との思い出を語る長女のジェイミーさん=ニューヨーク

 「父のことを聞きたいのですね」。ニューヨーク中心部に立つマンションの最上階。5月下旬に訪ねると、ジェイミー・バーンスタインさん(65)は笑顔で迎えてくれた。今年8月に生誕100年を迎える米国の音楽家レナード・バーンスタイン氏(1918~90年)の長女だ。

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 生前愛用したピアノや家族との写真など、ゆかりの品が多数飾られた部屋はまるでミニ記念館。ジェイミーさんは「父はすばらしい教育者でした。自宅で夕食を取っている時でさえ、子供たちに何かを教えることがありました。自分がいいと思ったことを、誰かと分け合いたかったのだと思います」と懐かしんだ。

■社会的活動も

 バーンスタイン氏は多くの顔を持つ。まずは「レニー」と親しみを込めて呼ばれた人気指揮者の顔。並び称されたカラヤン氏が「楽壇の帝王」の異名をとったのと対照的だ。作曲家としては、映画にもなったミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」など多彩な音楽を生んだ。ケネディ米大統領(当時)やポップス界のスター、マイケル・ジャクソンさんらとも交流。反戦・反核やエイズ患者支援など社会的な活動にも取り組み、クラシック界に収まりきらない存在だった。

 そして最も力を注いだのが、ジェイミーさんの言う「教育者」としての活動だった。その象徴が、世界の若い音楽家を育てるために、最晩年の90年に札幌で始めた国際教育音楽祭「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」。当時、世界的な巨匠がアジアの地方都市で音楽祭を創設したことは、驚きをもって迎えられた。しかし、同氏の教育への情熱を知る人たちにはごく自然なことに映った。

■子供心つかむ

 「自分たちも子供に教えることはあるが、なかなかバーンスタインのようにはいきません」。2003年から通算3回PMFで学び、現在はニューヨーク・フィルのビオラ奏者を務めるレミ・ペルティエさん(36)は苦笑いする。

 同フィルは、バーンスタイン氏が58~69年に音楽監督を務めた最もゆかりの深いオーケストラ。ここで指揮者としての名声を築いた一方、20年代から続く同フィル伝統の「青少年コンサート」を担当し、子供たちの心をとらえた。

 全米にテレビ放送されたコンサートでは司会も務め、会場のホールに集まった子供たちに音楽の魅力を分かりやすく解説した。当時、クラシック関係者が無視していたビートルズの曲も積極的に評価。自身も子供のころ客席で聴いたジェイミーさんは「ニューヨーク・フィルの指揮者が言うことならと、ビートルズを認める親も多かった」と影響力の大きさを語る。(文化部編集委員の石井昇が担当し、3回連載します)

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