加計問題

通常国会閉幕 言論の府の深刻な危機だ

07/22 05:00

 通常国会がきょう、閉会する。

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 会期中、森友学園問題を巡る財務省の公文書改ざんや、加計(かけ)学園問題で愛媛県が出した文書をはじめ、「森友・加計」の重大な新事実が次々と発覚した。

 だが安倍晋三首相や閣僚、与党幹部は真相究明に後ろ向きのまま幕引きを図るとともに、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法など問題の多い法案を数の力で次々と通していった。

 昨年の通常国会を思い起こす。安倍政権は、森友・加計問題の解明を求める国民の声に耳を傾けず、「共謀罪」法の参院委員会採決を省略する「中間報告」という禁じ手を使って成立させた。

 今国会は、まるでその再現だ。

 国権の最高機関である国会の地盤沈下が止まらない。議論なき国会のままでは、もはや言論の府とは言えないのではないか。

 議会制民主主義の深刻な危機だと言っても過言ではあるまい。

■「数のおごり」極まる

 典型的な例の一つが、参院の定数を6増する自民党提出の改正公選法である。先週、実質審議が衆参で計5日間という駆け込み採決で成立した。

 合区により選挙区に出馬できない現職を比例代表の「特定枠」で救う―。自民党の露骨な党利党略に反発した野党は、伊達忠一参院議長にあっせん案の取りまとめを求めたが、伊達氏は拒否した。

 幅広い合意が必要な選挙のルール作りまで数の力に物言わせることを、行司役が許した形だ。野党が議長不信任案を提出し「参院の権威を著しく失墜させる」と批判したのは当然だろう。

 熟議なき国会は政権の目玉だった働き方改革関連法にも通じる。

 関連法には、一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)が含まれる。働く者の命と健康を守る働き方改革本来の目的と相反する。

 不適切な実態調査が判明した裁量労働制が法案提出前に削除された後も、データのミスが次々と判明したが、政府は粗雑な答弁を繰り返すばかりだった。

 カジノ解禁と併せ、国会は将来にわたる国民の不安や懸念を取り除くことができなかった。

■森友・加計幕引けぬ

 行政府に対する監視機能は、立法府の重要な使命である。

 行政の公正性や透明性がゆがめられた疑念が、拭えないどころか一層深まった森友・加計問題の解明こそ、国会の出番のはずだ。

 森友学園に対する国有地の8億円の値引きや、加計学園の獣医学部新設を国家戦略特区に認定した一連の過程は適正だったのか。

 真相究明には、森友学園が開校を予定した小学校の名誉校長を務めた安倍首相夫人の昭恵氏、加計学園の加計孝太郎理事長が国会で真実を語ることが欠かせない。

 なのに、与党は野党の証人喚問の要求を拒否した。憲法が定める国会の国政調査権を放棄したと言われてもやむを得まい。

 首相も、身内と「腹心の友」ならなおのこと、疑念を晴らすよう促すのが務めのはずだ。

 そうしないどころか、愛媛県文書に記載された加計氏と首相の面会は作り話だったという学園側の説明に、首相は不快感すら示さなかった。理解に苦しむ。

 森友問題を巡る財務省の公文書改ざんは、主権者である国民に対する重大な背信行為だった。

 だが監督責任者の麻生太郎財務相はその座にとどまり、前財務次官のセクハラ問題も含め一向に政治責任を取ろうとしない。

 改ざん当時の理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏に対する野党の再喚問要求も、たなざらしにされた。

 こんな対応が続く限り、森友・加計問題に決して幕は引けない。

■野党も反省が必要だ

 首相の答弁は「ご飯論法」とやゆされた論点そらしや長広舌、居直りといった不誠実な姿勢に終始した。自ら口にする「行政府の長の責任」さえ果たしていない。

 ただ、首相の開き直りを許す野党も反省が必要だ。

 細かな事実を積み重ね、論理立てて執拗(しつよう)に政府答弁の矛盾を突いていく。また、独自の調査によって隠れた疑惑を掘り起こす。

 野党議員が備えるべき「質問力」と「調査力」を磨く必要がある。そう指摘せざるを得ないような甘い質疑が少なくなかった。

 働き方改革関連法やIR整備法の参院採決では、付帯決議を条件に採決には応じる国民民主党と、徹底抗戦の構えの立憲民主党との間で足並みも乱れた。

 安倍1強政治の下で、ただでさえ多弱と呼ばれる野党の対応がバラバラでは、緊張感のある国会は望むべくもない。

 安倍内閣の支持率が回復傾向にあるのは、野党に対する国民の期待が高まらないことの裏返しだ。態勢の立て直しが急務である。

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