社説

参院6増案通過 「良識の府」の名が泣く

07/12 09:39 更新

 来年の参院選の「1票の格差」是正に向けて、埼玉選挙区と比例代表の定数をそれぞれ2、4ずつ増やす自民党の公選法改正案がきのうの参院本会議で可決された。

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 比例代表の一部に、個人名の得票数と無関係に政党が当選順位を決める「特定枠」を新設する。

 埼玉の定数増により、最大格差は昨年の最高裁判決が合憲とした2016年選挙の3倍を下回る。

 だが自民党の真の狙いは、16年の選挙で導入された「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区によって出馬できなくなる現職を、特定枠で救済することにある。

 参院政治倫理・選挙制度特別委員会では他党から「党利党略だ」などと当然の批判が相次いだが、自民党は数の力で押し切った。

 「良識の府」の歴史に汚点を残したと言わざるを得ない。与野党は改正案を白紙とし、抜本的な制度改革を議論し直すべきだ。

 特別委はわずか3日間の審議に終わったが、自民案の矛盾点はある程度浮き彫りにされた。

 自民主導で01年に始まった比例代表の非拘束名簿式は個人名の得票数が多い候補が順に当選する。

 同じ党の中で特定の候補を当選させたいと考えて、政党名ではなく個人名で比例票を投じた有権者の意思が反映される。

 ところが今回、自民党は名簿の中で1人を除き全員を特定枠にすることも可能だと答弁した。個人票の獲得数が最多の候補でも、特定枠外なら落選もあり得る。

 当選順位を決めるのは有権者か政党か。趣旨が正反対の制度の併存に、野党が「いびつだ」と指摘したのはもっともな批判だ。

 合区導入の際の改正公選法は、制度の抜本的見直しに必ず結論を得ると付則で定めた。最高裁の合憲判断の根拠の一つになった。

 選挙制度は民主主義の土台であって、与野党の幅広い合意を形成する努力が求められる。

 ましてや定数を増やすというのなら、参院が国民の負託にどのように応えていくのかという議論なくして国民の理解は得られまい。

 ところが自民党は改憲による合区解消という筋違いな党内議論に時間を費やし、会期末が迫って改正案を提出した。伊達忠一参院議長は調整を求める野党の声に耳を傾けず、事実上職責を放棄した。

 さらにあきれたのは、自民党が特別委で「理想のみを追い求めることは、かえって無責任のそしりを受ける」と釈明したことだ。理想を求める努力すら怠った姿勢こそ、無責任極まりない。

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