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<赤平 炭鉱遺産を生かす ガイダンス施設誕生>上 元鉱員が常駐し解説

07/10 05:00
開業準備が進む炭鉱遺産ガイダンス施設を前に談笑する(右から)三上さん、島津さん、大藤さん、井上さん。背後にそびえるのは旧住友赤平炭鉱立て坑やぐら(桜井徳直撮影)
開業準備が進む炭鉱遺産ガイダンス施設を前に談笑する(右から)三上さん、島津さん、大藤さん、井上さん。背後にそびえるのは旧住友赤平炭鉱立て坑やぐら(桜井徳直撮影)

 炭鉱の歴史を伝える資料を集めた「赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設」(同市赤平485)が14日、開業する。次世代に炭鉱の記憶を伝えようと、市が2億7400万円かけて建設。鉄筋コンクリート平屋、500平方メートルの小さな施設だ。東隣には高さ43・8メートルの旧住友赤平炭鉱の立て坑やぐらがそびえる。

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■機材など200点

 施設がユニークなのは元炭鉱マンが常勤し、館内や周辺の炭鉱遺産を実体験に基づき解説することだ。施設職員4人のうちの1人、三上秀雄さん(68)は同炭鉱の元炭鉱マン。「24年前の閉山時、炭鉱にかかわる仕事にまた就くとは想像できなかった」と感慨深げだ。

 三上さんは高校卒業後、18歳で同炭鉱に就職し、1994年の閉山まで採炭労働や事故の際、坑内に入る救護班の仕事などに携わった。閉山後は建設会社や市の嘱託職員を務め、今春、市教委に臨時採用された。

 残る3人は、市教委文化財保護係の学芸員、井上博登(ひろと)さん(40)、同係の島津大地さん(23)、地域おこし協力隊の大藤寛之さん(25)。

 4人は間近に迫ったオープンに向け、資料展示準備に追われる。展示するのは縦1・5メートル、横5・6メートルの長大な坑内原図や、ヘルメットや防塵(ぼうじん)マスクなど鉱員が身に着け使用した機材、炭鉱街とその地下を走る坑道を可視化したジオラマなど約200点に上る。

■記憶伝承担う

 選定は学芸員の井上さんが担った。資料の多くは住友赤平小の空き教室で展示されていたが、2014年の閉校で行き場を失った。市は資料を公開する施設の開設を見据えて15年、札幌国際大観光学部講師だった井上さんを採用した。井上さんは早稲田大の院生だった頃から全国組織の「旧産炭地研究会」に属し、現地調査で赤平に長期滞在したことがある。市は炭鉱遺産伝承を担う人材として井上さんに白羽の矢を立てた。

 「現地に住むのが究極のフィールドワーク」と快諾した井上さんは資料の把握と整理に当たりつつ、三上さんらかつて炭鉱で働いた市民との交流を重ねてきた。施設で最年長の三上さんだが、元炭鉱マンとしては若手。三上さんらが元気なうちに聞き取りしなければ、炭鉱の記憶を残せない。

 協力隊の大藤さんも資料整理の傍ら、炭鉱の映像資料保存に携わる70歳代の元炭鉱職員のもとに足しげく通い、知識の吸収に励む。今年3月まで札大大学院で学び、労働史研究で修士号を得た。赤平に定住し、炭鉱遺産にかかわる仕事で生計を立てるのが夢だ。「十分な知識とスキルを身に付け、ガイドを担えるようになりたい」と意欲を燃やす。(芦別支局の藤浪淳が担当し、3回連載します)

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