国際

米大使館移転 「2国家共存」はどこへ

05/15 05:00

 トランプ米大統領はエルサレムをイスラエルの首都と宣言し、米国大使館を商都テルアビブから移転させた。

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 70年前、イスラエルが建国を宣言した14日の記念日に合わせた。

 エルサレムはユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地だ。パレスチナも東エルサレムを将来の独立国家の首都に位置付けている。猛反発するのは当然だ。

 大使館移転は、イスラエルに強く肩入れするもので、中東和平の大前提となってきたイスラエルとパレスチナの「2国家共存」に大きく反する。

 米国はパレスチナの人々の声にも耳を傾け、和平の再構築に向けて責任ある政策を取らなければならない。

 イスラエルの建国は、パレスチナにとっては、自分たちの土地を奪われ、今に至る苦難の始まりである。だから、その翌日を「ナクバ(大惨事)の日」と呼び、胸に刻んできた。

 イスラエルの側からだけ、歴史を見るわけにはいかない。

 4度の中東戦争を経て、500万を超えるパレスチナ人が故郷を追われ、難民となった。

 1993年、流血の歴史に終止符を打とうと、双方が米国の仲介で結んだのがオスロ合意だ。「2国家共存」を目指し、エルサレムの帰属はその後の交渉に委ねた。

 だが、交渉は頓挫し、今や合意は瀕死(ひんし)の状態だ。

 その最大の原因は、圧倒的な軍事力を背景にしたイスラエルの占領政策にある。国際法違反のユダヤ人入植地拡大もやめていない。

 米国はそれを黙認、あるいは後押ししてきた。和平の仲介役を務めながらイスラエル寄りの政策を取る「二重基準」である。

 今回の大使館移転はイスラエル偏重を一段と鮮明にするものだ。

 トランプ氏がそこまで踏み込んだのは、11月の中間選挙に向けて、親イスラエルの国内支持層を固める狙いが透けて見える。

 これまでエルサレムに大使館を置く国はなかったが、米国に追随する動きがある。

 ガザ地区では抗議するパレスチナ人とイスラエル軍が衝突し、大勢の死傷者が出ている。

 身勝手で内向きの政策が混乱に拍車をかけている。

 イスラエルはIT先進国として発展してきた。一方でパレスチナ人は各地に散り散りになったまま、人権を踏みにじられる状況が続いている。「2国家共存」の原則を捨ててはいけない。

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