社説

首相の国会答弁 うみを出す気あるのか

05/15 05:00

 「こうしたことが二度と起こらないように、首相としての責任を果たしていきたい」―。

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 その「こうしたこと」自体がやぶの中なのになぜ、政府内の調査すら徹底しようとしないのか。

 安倍晋三首相はきのう、加計(かけ)学園問題などを巡る衆参の予算委員の集中審議で答弁に臨んだ。

 先の柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致では、獣医学部新設が当初から「加計ありき」で進んでいた疑念が深まった。愛媛県の中村時広知事は、柳瀬氏答弁と県の面会記録との矛盾を指摘している。

 国民の不信を解消するにはその溝を丁寧に埋めていくしかない。

 なのに首相は、問題は解決済みと言わんばかりの答弁を繰り返した。「うみを出し切る」という約束は、言葉だけだったのか。

 野党側は柳瀬氏に加え、学園理事長の加計孝太郎氏の証人喚問や中村知事の参考人招致を求めている。与党は早急に応じるべきだ。

 柳瀬氏の招致では、獣医学部の事業者公募のはるか以前から、官邸と学園側が面会を重ねていた事実が明らかになった。その結果、半世紀以上認められなかった計画が、異例の急ピッチで進んだ。

 共同通信の世論調査では、柳瀬氏の答弁に「納得できない」との回答が75%にも及んでいる。

 核心にあるのは、首相が掲げた国家戦略特区について、首相の盟友が理事長の学園との協議が官邸内で進んでいたのに、首相は知らなかったとする不自然な説明だ。

 ところが首相答弁は、官邸の異例の対応に「大きな意味はない」、柳瀬氏答弁と面会記録の矛盾は「私としてはお答えのしようがない」と、まるで人ごとである。

 官邸での面会に文科省、農水省の職員が同席していたことも判明したが、首相は「これ以上の調査は意味はない」と拒否した。

 国民の不信を晴らすつもりがあるのか。首相はいますぐ政府内の徹底調査を指示すべきだ。

 一方、財務省のセクハラ問題でも政権の責任回避が目に余る。

 麻生太郎財務相は、省として前事務次官のセクハラを認定した後も「セクハラ罪はない」などと放言し、撤回や陳謝を重ねている。

 きのうは国会で、野党の質問に「自分がしゃべりたいんだよ、この人は」とやじを飛ばした。国民の代表と相対している自らの立場を理解できないのだろうか。

 首相は「陣頭指揮をとって組織を立て直してもらいたい」と麻生氏を擁護したが、その進退が厳しく問われている。

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