社説

イラク日報隠蔽 文民統制の重大な危機 

04/06 05:05

 防衛省は陸上自衛隊のイラク派遣中の日報について、1年前には陸自で存在を確認しながら当時の稲田朋美防衛相らに報告していなかったことを明らかにした。

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 小野寺五典防衛相が「調査したら確認できた」と発表したのは今月2日だ。昨年2月に稲田氏が「なかった」とした国会答弁が一転した上、「見つかった」のではなく「隠していた」ことになる。

 国民に対する背信行為と言わざるを得ない。国民主権の下で実力組織の自衛隊を制御する文民統制(シビリアンコントロール)が重大な危機にひんしている。

 イラク日報は陸自研究本部(現教育訓練研究本部)で昨年3月、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸自の日報隠蔽(いんぺい)問題に関する特別防衛監察の過程で発見された。

 直ちに組織として共有し、国民に明らかにすべきところを、研究本部の教訓課長は報告の必要性を「認識していなかった」という。

 自衛隊の海外派遣の中でも、戦闘状態にあった2004年のイラク派遣はとりわけ重要な節目だ。

 部隊の活動を伝える日報は今後の安全保障政策を考える上で欠かせない記録であり、後世に残す歴史の証言でもある。

 その意義をわきまえないばかりか、都合の悪い情報とみて国民の目に触れさせまいとするような隠蔽体質が防衛省・自衛隊にしみ付いているのなら、旧日本軍が犯した過ちと同じ道を進みかねない。

 小野寺氏はきのうの国会で日報発見の経緯を「私もふに落ちない点がある」と述べたが、まるで人ごとのように聞こえる。

 PKO日報問題の教訓が生かされず、昨年8月の就任後も文書の存在について報告が上がってこないままだったとすれば、省のトップとしての統率力が問われる。

 自衛隊の最高指揮官である安倍晋三首相の責任も免れまい。

 安倍政権が進めた防衛省改革により制服組の権限や影響力が増す一方で、「背広組」と呼ばれる内局の防衛官僚のチェック機能が低下したとの指摘もある。問題の背景として検証の必要があろう。

 野党は集中審議の開催と稲田氏や当時の事務次官、陸上幕僚長の招致を求めている。与党も国会での真相究明に後ろ向きになることがあってはならない。

 政権が今なすべきは憲法9条への自衛隊明記ではない。民主主義の根幹をなす文民統制を組織の末端まで浸透させるような体質改善を徹底することである。

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