社説

放送の規制緩和 短絡的で信頼を損なう

04/02 05:05

 政府の規制改革推進会議が放送事業の見直しを検討している。

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 インターネットを含む通信事業と、放送事業との間で異なる規制を一本化する。NHKを除き、番組の政治的公平などを求めた放送法の規制は撤廃するという。

 規制緩和を通じて放送への新規参入を促し、多様な番組を視聴者に提供するのが狙いとされる。

 安倍晋三首相は「ネットテレビは視聴者の目線に立てば、地上波と全く変わらない」「自由なネットの世界に規制を持ち込む考え方はない。であれば放送法をどうするか」と述べている。

 過激な表現や真偽の不確かな情報も流れるネット空間に合わせ、放送の規制を取り払う改革の方向に危惧を覚えざるを得ない。

 そもそも、ネット動画配信サービスと民放テレビ局を同列に置くのは短絡的だ。

 目的とは逆に、むしろ質の低い番組が増えて、放送の信頼を損なう恐れがある。

 焦点の放送法4条は、放送局に「公序良俗」「政治的公平」「事実をまげない」「多角的論点」を守る番組編集を義務付けている。

 加えて、報道、娯楽など番組種類別の編集基準、番組審議機関の設置といった規定も撤廃の対象となっている。これでは、番組制作の基準がなくなるに等しい。

 視聴率目当ての過激な番組やフェイク(偽)ニュースの横行といった弊害が懸念される。

 1987年に公平原則を撤廃した米国では視聴率競争が激化し、党派色の強い放送局も増え、社会の分断を助長したとされる。

 これまで4条の政治的公平は政治が介入する口実となってきた。特に、安倍政権では2年前、当時の高市早苗総務相が電波停止を命じる可能性にさえ言及している。

 にもかかわらず、今度は唐突に4条撤廃が浮上した。あまりにご都合主義ではないか。

 4条はあくまで放送局が自らを律する倫理規範と解するのが通説だ。これを守るためNHKと民放が設立した放送倫理・番組向上機構も機能している。その現実を踏まえるべきだろう。

 放送の規制緩和ではこのほか、番組供給のソフト部門と放送設備を運営するハード部門の分離も検討課題になっている。民放局を事実上解体する内容で、各社が反発するのは当然だ。

 自由競争優先の産業政策を、放送に当てはめるのは乱暴だ。極端な規制緩和は、民放への「威嚇」とみられても仕方あるまい。

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