平昌五輪

準決勝 韓国戦 驚異の粘りでエクストラエンドへ

02/25 15:40

 【2月23日 カーリング女子準決勝 日本対韓国】
 LS北見の日本は、第1エンドに3点を取られ厳しい立ち上がり。第8エンドを終えて4−7とリードされたが、第9エンドに2点、そして最終第10エンドで不利な先攻にも関わらず1点をスチールして同点に追いつき、エクストラエンドまでもつれ込む接戦となった。ギリギリまで韓国を追い詰めたものの、エクストラエンドで力尽きたLS北見は決勝進出とはならず、3位決定戦に回ることになった。

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 6−7とリードされた最終10エンドについて、北海道大学大学院の山本雅人教授と、山本研究室のカーリング戦略AI「じりつくん」が分析した。



【最終10エンド。先攻・日本(黄色)、後攻・韓国(赤色)。残り3投ずつ】

【図1】最終第10エンド。先攻・日本(黄色)、後攻・韓国(赤色)。残り3投ずつ
【図1】最終第10エンド。先攻・日本(黄色)、後攻・韓国(赤色)。残り3投ずつ

 LS北見(黄色)が勝つためには、この第10エンド、不利な先攻で1点以上をスチールしなければなりません。【図1】の状態となり、ここでLS北見はタイムアウトを取ります。LS北見は以下、2つの戦略【図2】で迷います。

【図2】センターガードをおくショット(左)と相手のナンバー1につけるショット(右)
【図2】センターガードをおくショット(左)と相手のナンバー1につけるショット(右)

 タイムアウトでコーチと相談した結果、LS北見はまず【図2左】のセンターガードをおく作戦を選びます。その後、ガードストーンを弾き出された場合は【図2右】のようにナンバー1ストーンにつけるショットを選ぶ戦略です。どちらにしても「じりつくん」が見積った勝率は3%程度と、LS北見にとって非常に苦しい状況が続きます。

 しかし、実際にはLS北見の投球は【図3】ように、少しだけセンターラインより外(右)側、ハウスにやや近い位置のガードとなりました。

【図3】LS北見の第6投後。ガードはセンターラインより外(右)側、ハウスにやや近い位置となった
【図3】LS北見の第6投後。ガードはセンターラインより外(右)側、ハウスにやや近い位置となった

 しかし、結果的にこのショットが韓国の作戦を狂わせます。韓国は【図4】ようにダブルテイクアウトを狙うことで、勝利をより確実にできると考えたのではないでしょうか。

【図4】韓国が第6投で狙った戦略。ダブルテイクアウトを狙う
【図4】韓国が第6投で狙った戦略。ダブルテイクアウトを狙う

 しかし「じりつくん」が出したこの局面での韓国のベストショットは、ハウス前の黄色のガードストーンのみを確実に出し,自分の投げたストーン(シューター)もガードにならない位置におく作戦でした。ラストショットでナンバー1を取れば、確実に勝てるわけですから。

 韓国はダブルテイクアウトに成功はするものの、シューターがよりセンターラインに近い位置にガードとして残ってしまいました【図5】。ここから少しずつ様子が変わってきます。

【図5】韓国はダブルテイクアウトに成功したものの、シューターがよりセンターラインに近い位置にガードとして残ってしまう
【図5】韓国はダブルテイクアウトに成功したものの、シューターがよりセンターラインに近い位置にガードとして残ってしまう

 この後、1投ずつを終え、それぞれ残り1投を残しての【図6】の局面。LS北見(黄色)がスチールする可能性が高くなってきました。

【図6】残り1投ずつ。LS北見がスチールする可能性が高まった
【図6】残り1投ずつ。LS北見がスチールする可能性が高まった

 「じりつくん」が見積もったエンド終了時の期待得点分布は以下のグラフのようになっており、スチールする率が44.2%にもなっています。

【グラフ】LS北見が2点以上を取る確率が12.2%、1点を取る確率が32%で、合計44.2%にもなった
【グラフ】LS北見が2点以上を取る確率が12.2%、1点を取る確率が32%で、合計44.2%にもなった

 【図6】の局面で、LS北見(黄色)はハウス中央のナンバー1ストーンを守るガードを置くことを選択します。ちなみに「じりつくん」のベストショットは、ハウスのナンバー1ストーンにつける(フリーズ)ショットでした【図7】。

【図7】「じりつくん」が選んだベストショット。ハウスのナンバー1ストーンにつける(フリーズ)ショット。しかし、リスクが大きく実戦では選択しにくい
【図7】「じりつくん」が選んだベストショット。ハウスのナンバー1ストーンにつける(フリーズ)ショット。しかし、リスクが大きく実戦では選択しにくい

 しかし、フリーズするショットは非常に難しく、ナンバー1とナンバー2のストーンが近いと簡単に出されてしまう(ダブルテイクアウトされる)ので、このショットは実戦では選びにくい戦略でしょう。

 このあたりは「じりつくん」の見積もりが、まだ甘いところかもしれません。LS北見が選択したよう、ナンバー1ストーンを守るセンターガードが妥当な戦略に思えます。

 さて、実際にはスキップの藤澤選手のガードストーンが見事に決まり、【図8】の局面になりました。 

【図8】スキップ藤澤選手のガードストーンが見事に決まった
【図8】スキップ藤澤選手のガードストーンが見事に決まった


 ここで韓国の狙いは【図9】のようにガードストーンをかわして、ハウス中央のナンバー1ストーンを弾き出すショットですが、これも難しいショットで「じりつくん」はこのショットの成功率を 64%と見積もりました。

【図9】ラストショット、韓国の狙い。ガードストーンをかわしてハウス中央のナンバー1ストーンを弾き出す。「じりつくん」が見積もったこのショットの成功率は64%
【図9】ラストショット、韓国の狙い。ガードストーンをかわしてハウス中央のナンバー1ストーンを弾き出す。「じりつくん」が見積もったこのショットの成功率は64%

 韓国がこのショットを失敗し同点でエクストラエンドとなっても、先攻の日本がスチールする確率は22%ほどです。この最終ショット前、試合全体のLS北見の勝率は8%しかありませんでした。

 韓国のラストショットは、実際には【図10】のように、中央のストーンに対して少し薄めに当たりました。投げたストーン(シューター)は少し奥に行ってしまい、LS北見のナンバー1ストーンが残りスチール成功、同点となりました。これも、ガードストーンを絶妙な位置に置けたことが大きかったと言えると思います。

【図10】最終局面。韓国のラストショットがLS北見のナンバー1ストーンに少し薄めに当たり、シューターは奥へ。LS北見のナンバー1ストーンが残り、見事スチールに成功
【図10】最終局面。韓国のラストショットがLS北見のナンバー1ストーンに少し薄めに当たり、シューターは奥へ。LS北見のナンバー1ストーンが残り、見事スチールに成功


 エクストラエンド、LS北見は不利な先攻でしたが、韓国にプレッシャーのかかる難し い最終ショットを残すことに成功しました。しかし、韓国のスキップの選手のショットは見事で、LS北見はスチールすることはできず、残念な結果となりました。

 ゲーム全体を振り返ると、第8エンド終了時点では、予選リーグのスウェーデン戦の逆転勝利(2点差負けの後攻)よりも厳しい3点差負けの後攻という状況でした。「じりつくん」はこの時点でのLS北見の勝率を4%と見積もっており、もしLS北見が勝っていたら、伝説的な逆転劇になっていたことでしょう。

 負けてはしまいましたが、エクストラエンドまで持ち込み、勝率4%の実現まであと一歩まで迫ったLS北見。手に汗握る接戦で、日本中を興奮の渦に巻き込んだ見事な試合でした。


山本雅人(やまもと・まさひと)教授 1968年、札幌出身。札幌旭丘高、北海道大学工学部情報工学科卒。同大学院工学研究科システム情報工学専攻博士後期課程修了。バックギャモン(西洋すごろく)のジャパンオープン、日本選手権などで優勝経験あり。自身もカーリングチーム「Backgammon」でプレーする。

じりつくん 山本研究室(自律系工学研究室)で開発中のカーリング戦略AI。AI同士を戦わせることで、100万の局面を学習している。ある局面について、想定される数万ショットの中から最善手を選ぶ。スイーピングやアイス状況の変化という要素はないものの、期待得点計算やリスク計算などにより、戦略面で実戦の参考になるように開発を目指している。

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