社会

人と大地を守る―北海道南西沖地震から四半世紀(2)

02/23 01:50

富士通総研経済研究所上級研究員兼名古屋大学減災連携研究センター受託研究員 上田 遼

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■動き始めた世界、そして北海道の民間企業は

 我々は、前進しなければならない。そして、いま世界は「マルチ・ステークホルダー(多種関係者)型」の防災に向かって動いている。大規模災害時では、実際に動ける人びとや物的資源などが極めて限定されるため、国あるいは自治体だけでは対応できず、民間や市民の協力があってこそ初めて効果が期待される対策ができる、との考え方である。

 仙台で私が聴講した2017年11月の「世界防災フォーラム」では、世界各国のさまざまな取り組みを交え、真剣な議論が繰り広げられた。この場所で2030年へ向けての世界目標が約束された。(7つの地球規模の目標を、4つの優先行動によって2030年までに達成する)

「マルチ・ステークホルダー型防災を目指す」。世界防災フォーラム=2017年11月(筆者撮影)
「マルチ・ステークホルダー型防災を目指す」。世界防災フォーラム=2017年11月(筆者撮影)

 日本、そして北海道ではどうだろうか-。

 すでに北海道では昨年12月までに、北海道と民間企業157社が災害時の協力協定を結ぶなどの「地域連携」が始まっている。地震災害時のみならず、暴風雪などによって閉ざされたケースではコンビニエンスストアから飲料水やトイレの提供が行われている。

■人と大地を守る、顔の見える関係づくりを

 北海道のような「広大かつ寒冷地」では文字通り、救急救命活動や命をつなぐための物資は生命線であり、大地をあまねくつなげなければならない。障害要因がより複雑化するため、マルチ・ステークホルダー型の防災の幅も広げる必要がある。

 戦後間もない1952年にあった「十勝沖地震」は、積雪期である3月4日に発生したため、雪道での移動ルートを切り開く対応に大きな苦労があったとして知られている。

1952年の十勝沖地震。津波に洗われた霧多布市街
1952年の十勝沖地震。津波に洗われた霧多布市街

 もちろん、今日のマルチ・ステークホルダー型防災において重要なのは、関係者間の意思疎通である。冬季の北海道では除雪業者と道路管理者、さらに物資輸送者の少なくとも三者が意を合わせ、遅滞を招かぬよう復旧に向けて進むことである。しかし、国道、道道など道路管理者が道路ごとに異なっていたり、物資輸送者のどこかにボトルネックができたり、そもそも地域ごとに復旧の優先順位が異なったりするなど、三者が連携していくには難題を抱えているのも現状だ。

 効果的な対策づくりのためには、発災に関する不断の状況把握や情報共有はもちろんのこと、日ごろから「顔の見える関係」をつくり、復旧計画についてお互いが寄り添っていく必要がある。世界目標の「2030年」を待たずにして、今すぐ取り組むべきである。(この項おわり)

うえだ・りょう 富士通総研経済研究所上級研究員兼名古屋大学減災連携研究センター受託研究員。2007年、東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程(工学) 修了。建設会社での構造設計や研究開発の知見を活かしつつ、国際的な防災政策や地域防災に取り組む。地域連携の重要性を訴え、防災の伝統的な知恵と現代防災の接点も探求している。1983年東京都生まれ。趣味は地方の温泉めぐり、能楽。
うえだ・りょう 富士通総研経済研究所上級研究員兼名古屋大学減災連携研究センター受託研究員。2007年、東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程(工学) 修了。建設会社での構造設計や研究開発の知見を活かしつつ、国際的な防災政策や地域防災に取り組む。地域連携の重要性を訴え、防災の伝統的な知恵と現代防災の接点も探求している。1983年東京都生まれ。趣味は地方の温泉めぐり、能楽。

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