社説

EPAとTPP 影響のさらなる精査を

02/03 05:00

 道は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)と米国離脱後の11カ国による環太平洋連携協定(TPP)が北海道の農林水産物に与える影響試算を公表した。

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 試算によれば、EPAでは関税引き下げに伴う輸入品の増加や価格低下で、乳製品や牛肉を中心に年間計214億~329億円の生産額が減少する。TPPでは同312億~495億円とした。

 対策を検討するために参考となる資料ではあるが、政府が設定した前提をそのまま当てはめるなど、疑問点も含んでいる。

 政府の対策により、国内生産量が維持されるといった想定を額面通り受け取るわけにはいくまい。

 道は生産現場の声に耳を傾け、影響をより正確に把握すべきだ。

 EPAで道内の生産減少額が最大なのは乳製品の124億~184億円で、全国の9割に上る。チーズの関税撤廃や引き下げによる輸入増などの影響を受ける。

 TPPでは乳製品が182億~280億円、次いで牛肉が47億~94億円などとなった。

 ただ、試算は近年の生産や輸入の実績を基に、輸入品が関税削減で値下がりするのに応じ、国産品の価格も下がるといった機械的な計算をしているにすぎない。

 たとえば、チーズの場合、具体的にどんな種類の商品が輸入品と競合するのか。消費動向はどうなるのか。条件によって影響は変わってくるはずだ。

 道は、実情に即して、影響の精査を続ける必要がある。

 政府は、農業の体質強化や経営安定を図るため、2017年度補正予算に3170億円を計上し、牛舎の建て替えや搾乳ロボットの導入などを補助する。

 こうした支援により、道は「影響の緩和が見込まれる」としているが、必ずしも支援が効果を発揮するとは限らない。

 牛舎の建て替えは、資材高騰などで将来の農家の負債が重くなる恐れもある。一部では小規模な家族酪農向けが対象になりにくいとの指摘もあり、きめ細かい経営の下支えが欠かせない。

 道内各地には約120のチーズ工房があり、農水産品の加工施設やレストランもある。地場産品の生産・販売を後押しする道独自の振興策も検討するべきだ。

 忘れてはならないのは、2協定とも発効後、関税が段階的に下がり、年数がたつほど影響が広がることだ。貿易自由化の進展を踏まえ、北海道農業の将来を見据えた議論も求められる。

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