社説

激動を越えて 北海道から再生の知恵を

01/09 05:00

 570万道民。「平成」の始まりには誰もが達成して当然と思っていたこの数字は、すっかり過去のものとなった。

[PR]

 住民基本台帳に基づく昨年の道内人口は534万人である。ピークだった1998年の569万人との差は、実に35万人だ。道内第2の都市である旭川市の人口に匹敵する。

 人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)も2015年国勢調査で29・1%となり、全国平均を2・5ポイント上回る。15歳未満は減り続け、少子高齢化が進む。これからも人口減は避けられまい。

 縮みゆく地域で、どうしたら豊かに暮らし続けられるのか。

 北海道のみならず、全国共通の大きな課題である。

 ならば、その代表格ともいえる北海道でこそ、地域再生の道筋を描いていかなければならない。

夕張の教訓を大切に

 老朽化し、空き家が目立つ市営住宅のほど近くに、真新しい市営住宅や民間賃貸住宅が並ぶ。

 全国唯一の財政再生団体である夕張市の光景だ。

 市は昨年3月、借金返済に偏った財政再生計画を抜本的に見直し、まちづくりへの投資もできるようにした。

 住宅政策は、新しい計画に基づくまちづくりの柱の一つだ。

 若者の定住促進が狙いだが、他の自治体が既に取り組んでいることを、ようやくできるようになったにすぎない。

 06年の財政破綻後、住民は約10年にわたり「全国最低のサービス、全国最高の負担」といわれる環境に置かれてきた。

 まちの将来に不安を抱いた住民の流出が止まらず、破綻時に1万3千人だった人口は8千人台まで減った。

 このまま何もしなければまちが消える。そんな危機感を国も共有したのだろう。まちづくりへの支援に特別交付税を充てることを決め、再生計画の見直しを認めた。

 夕張の歩みは、最低限のインフラ整備などを保障する「ナショナルミニマム」の考え方が後退すれば、衰退に拍車がかかることを示している。

 人口が減ってもそこに住みたいと望む人が暮らし続けるために、最低限必要な投資がある。

 それにはまず自治体が国任せではなく、投資の裏付けとなるまちづくりの方向性を自ら打ち出すべきだ。国や道にはその下支えの役割を果たしてもらいたい。

社会基盤崩壊を防げ

 人口減の影響は、社会基盤の存廃にまで及んでいる。

 JR北海道は鉄道網の半分を「単独では維持困難」と表明したが、沿線市町村の反発を招いた。

 そんな中、予約に応じてタクシーなどを走らせるデマンド交通など、新しい交通手段を探る動きも出てきている。

 ただ、利用者が少なく、試験段階で導入を先送りしたケースもある。地域の住民が利用しなければ、生活の足として根づかない。

 地域から商店や給油所がなくなり、自治体が運営や開業に関与する事例も増えている。

 公費投入には住民の十分な理解が要る。施設をバスの待合所や交流の場として生かすなど、単に商店や給油所にとどまらない役割を果たす工夫が不可欠だ。

 同時に住民自身も、生活基盤を守り育てていく意識を持ちたい。

 とはいえ、自治体だけで解決できない課題は少なくない。

 道内では、平成の大合併によって行政区域が広がったことにより、自治体の中心部と周縁部の格差も出始めている。

 合併を推し進めた国には、その影響を検証し、対策を講じる責任があろう。

地域の宝で移住促進

 人口減少が進む道内で、明るい兆しもある。

 道外から道内への転入者数がここ数年、増えているのだ。

 一時は5万人を超えていた転入者数は、14年に4万6千人台まで減ったが、15、16年と増え、4万8千人台に回復した。

 この流れを定着させたい。

 道と道内の市町村が取り組んでいる体験移住事業の16年度の利用者数が過去最多となった。道内移住の予備軍といえる。

 移住の決め手は、就労の場の確保を含めた「住みやすさ」だ。

 道内は、日本の食を支える1次産業だけでなく、再生エネルギーの源となる風力やバイオマスなどの有望地も多い。こうした地域の宝に磨きをかけ、実際に仕事を生み出す努力が欠かせない。

 一極集中が続く札幌市も、20年までには人口減少が始まるという推計がある。

 高度経済成長期に整備が進んだ札幌の都市機能は更新期を迎える。将来の人口減を見据え、メリハリのある設計図を描くべきだ。

ページの先頭へ戻る