社説

激動を越えて 格差是正の流れを確実に

01/07 05:00

 空前のバブル景気で幕を開けた平成が、深刻な格差と貧困を抱えて幕を閉じようとしていることを、誰が想像しただろう。

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 バブル崩壊後に本格化した労働規制の緩和で、正社員になれない非正規労働者が激増した。

 2008年暮れ、リーマン・ショックのあおりで解雇され、住まいも失った非正規労働者らを支える「年越し派遣村」ができた。

 戦後最長の景気拡大期間とされる「いざなみ景気」の下で、雇用が劣化していた実態を如実に示したと言えよう。

 いったんつまずけば貧困に滑り落ちる安全網の弱さが問題化して、およそ10年。この間、貧困は子どもたちの間にも広がっていることが徐々に明らかになった。

 政府は、ようやく格差是正に向けて動きだそうとしている。

 将来世代に負の遺産を残さないためにも、掛け声倒れに終わることがあってはならない。

■非正規の待遇改善を

 政府は、1986年に施行された労働者派遣法を何度も改正し、その対象を拡大してきた。

 派遣労働者、パートやアルバイトなどの非正規雇用は2016年に2千万人を超えた。平成元年である1989年の2・5倍で、全労働者の4割に迫る。

 これほどまで広がった主な理由は、経営側が、雇用の便利な調整弁として活用したからだ。

 非正規労働者はフルタイムで働いても、賃金は正社員の6割を切る。フランスの9割、ドイツの8割にはほど遠い。

 正社員を希望する「不本意非正規」は300万人もいる。

 とりわけ深刻なのは若年層だ。貯金ができず、結婚や出産を諦める。子どもができても教育に目を配る余裕がない―。こうした状態をもはや放置できない。

 通常国会では、正規と非正規の間の不合理な待遇格差を禁じる「同一労働同一賃金」の導入が議論される。

 法律の抜け道をふさいで、待遇改善の実効性を確保しなければならない。企業は、正社員の賃金カットで対応するのではなく、総人件費を増やして労働者全体への還元に努めるべきだ。

■子どもの支援が急務

 貧困の連鎖を食い止めるための子どもへの支援も不可欠だ。

 貧困状態の家庭で暮らす子どもの比率は、15年時点で13・9%に上った。

 17歳以下の7人に1人が貧困状態にあり、特に一人親世帯で2人に1人という高水準が続く。

 生活保護の基準となる最低生活費以下の収入で暮らす、子育て世帯の割合は、道内は2割に迫り、全都道府県で5番目に高い。

 道と札幌市、北大が行った「北海道子どもの生活実態調査」の分析によると、こうした困窮家庭の半数は貯金がなく、各種料金の滞納も多かった。

 親たちは孤立しがちで、うつ病リスクが高く、医療機関の受診を控える傾向がある。

 当事者の努力だけでは立ちゆかない状況なのは明白だ。

 家庭の経済事情にかかわらず、誰もが希望すれば進学できる環境を整える―。

 1年前、安倍晋三首相は施政方針演説でこう宣言した。

 確かに、給付型奨学金の拡充、生活保護受給世帯の進学者への一時金支給など、支援の要請に応える動きも出てきた。

 ところが、生活保護基準の引き下げ、母子加算の減額などは、明らかに逆行している。

 家庭の貧困を放置したままでは、子どもたちの自立は困難だ。

 教育を含め、あらゆる施策に貧困救済の視点を入れ、不利な条件を和らげていく必要がある。

■個人の責任にしない

 格差の固定は働く意欲をそぎ、低賃金は消費をしぼませる。

 特に、若年層が貧困から抜け出せるよう支援する仕組みがないと、最終的には生活保護費が膨らみ、社会保障費は増大する。

 経済協力開発機構(OECD)は、格差の拡大は貧困層の教育投資の不足を招き、結局、経済成長を抑制すると指摘した。

 多くの人の潜在能力が無駄になり、社会から活力が奪われるというのである。

 生まれた環境によって、将来が左右されるような事態は、避けねばなるまい。

 憲法13条は、幸福追求に対する国民の権利は国政で最大限尊重されるとしている。

 その理念を実現するためには、社会の再分配機能の強化が欠かせない。

 その調整に当たることこそ政治の役割だ。

 貧困を個人の責任に押しつけず、あらゆる人に機会を保障するという観点に立ち、政策を洗い直さねばならない。

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