社説

激動を越えて 分断から寛容への転換を

01/01 05:00

 残り2分30秒。

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 米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は約1年前、地球最後の日までの残り時間を示す「終末時計」の針を、30秒進めた。

 1991年の年末は「17分」だった。ソ連崩壊と同時期である。

 世界が東西冷戦の緊張から抜け出し、平和が訪れる。そんな期待が膨らんでいた。

 しかし、冷戦後に吹き出した民族や宗教が絡み合う複雑な対立を前に、世界は解決のための有効な手を見いだせていない。

 国家、個人を問わず、混迷の中で自らを守ろうとする内向き思考と、それによる分断が世界中を覆っているかのようだ。

 このままでは、終末時計の針はどんどん進んでしまう。歯止めをかけなければならない。

 1989年に始まった日本の「平成」は、こうした混迷の時代とほぼ重なる。日本もまた激動の波の中で揺れ続けてきた。

 来年4月30日には、その「平成」最後の日を迎える。これを機に過去を検証し、次の時代へと向かいたい。キーワードは「分断から寛容へ」ではないか。

■「時計」の針進めるな

 湾岸戦争、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、イラク戦争…。冷戦が終結しても戦火が途絶えることはなかった。2001年の米中枢同時テロは世界に衝撃を与えた。

 テロや紛争はいまも頻発。東アジアでは国際的な非難を無視し、北朝鮮が核開発を進めている。

 本来なら、大きな影響力を有する米国が協調構築の先頭に立つべきだろう。なのに、その大国はトランプ大統領誕生で自国第一主義へと大きく傾いてしまった。

 トランプ政権はイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の聖地であるエルサレムをイスラエルの首都と認定し、世界の批判に対しては経済支援を削減すると開き直った。これではリーダーたり得ない。

 やはりここは、国連の存在意義を見つめ直し、分断の芽を丁寧に摘んでいくしかあるまい。

 兆しがないわけではない。

 昨年7月には、核兵器の完全廃絶を目指した核兵器禁止条約を採択した。核保有国や日本など「核の傘」に頼る国は参加しなかったとはいえ、採択の意味は大きい。

 大切なのは、幅広い合意形成に向け国連と加盟国が汗をかける態勢を築くことだ。安全保障理事会で5カ国が拒否権を持つ不平等な仕組みも再点検が求められよう。

■懐の深さが不可欠だ

 日本は平成に入ってほどなくバブル経済が崩壊し、北海道でも拓銀が破綻した。

 2008年にはリーマン・ショックにも襲われ、企業は「まさか」に備えた内部留保を積み増し、賃上げや投資に二の足を踏む。

 加えて、労働規制の緩和が多数の非正規労働者を生み出し、格差は拡大した。国民は、政府がどんなに旗を振っても消費をためらう。将来が見通せないからだ。

 1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災と、相次ぐ災害がそれに追い打ちをかけた。東京電力福島第1原発の過酷事故では、今も避難を余儀なくされている人々がいる。

 1億総中流の幻想が消え去り、格差や分断を実感している国民も少なくない。

 こんな時こそ、政治には民意を幅広く受け止める懐の深さが欠かせない。ところが、それとはほど遠い発言がしばしば飛び出す。

 安倍晋三首相は昨年の東京都議選の街頭演説で、「辞めろ」コールをした聴衆に向かって、声を張り上げた。

 「こんな人たちに私たちは負けるわけにいかない」。「こんな人たち」と「私たち」の間に、はっきりと線を引いたのである。首相が自ら国民の分断を促す発言をしたと指摘されても仕方がない。

 阪神大震災では多くのボランティアが被災地に駆けつけ「ボランティア元年」と評された。一昨年の熊本地震でもその力が発揮されている。「線引き」とは逆の、こうした発想こそが必要だ。

■自治を立て直したい

 かつて212だった北海道の市町村数は、「平成の大合併」で179に減った。

 しかし、合併が地域に活力をもたらしたとは言い難い。北海道の人口規模が縮み続ける半面、札幌一極集中が加速している。

 2016年にはようやく北海道新幹線の新青森―新函館北斗間が開業したが、このままでは首都圏との格差はさらに開きかねない。

 北海道開発予算はピーク時の半分程度に減っている。住民自身が国頼みの姿勢から抜け出し、まちの将来像を描いていかなければならない。自治の再構築である。

 今年は「北海道」命名から150年でもある。節目の年を、真の自立への第一歩としたい。

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