社説

米国の安保戦略 力頼みで平和は描けぬ

2017/12/21 05:00

 安全保障の包括的な方針でも「米国第一」が鮮明になった。

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 トランプ米大統領が新しい国家安全保障戦略を発表した。

 トランプ氏は中国とロシアを「米国の価値や富に挑戦するライバル」、北朝鮮とイランを「ならず者政権」と位置づけた。

 その上で圧倒的な軍事力や経済力による「力」で米国の優位を保つ考えを示した。

 ライバル国とも外交関係を通じて、信頼醸成を目指したオバマ前政権の安保政策からの大転換だ。

 何事も自分たちの力で抑え込めるとの考えがうかがえる。国際社会の意見に耳を貸そうとしないトランプ氏の態度を合わせると、危惧を覚えざるを得ない。

 世界を敵と味方に分けるようなやり方は、ブッシュ(子)政権にも見られた。ブッシュ氏は2002年の安保戦略で、単独での「先制攻撃」を辞さない方針を記し、半年後にイラク戦争に踏み切った。

 だが、開戦の大義だった大量破壊兵器は発見されず、泥沼の抗争を招いた。世界の脅威となる過激派組織「イスラム国」(IS)を生むことにもなった。

 米国が国際社会の反対を押し切って、武力に訴えた責任は極めて重い。

 トランプ氏は、中国、ロシアをあからさまに警戒しているが、現実的な対応とは言えまい。

 ロシアのクリミア編入や中国の南シナ海進出などの動きは看過できない。しかし、北朝鮮の核開発を阻止するためにも、中ロとの連携は欠かせないだろう。

 米ソがにらみ合った冷戦時代に逆戻りしようとしているようだ。

 過激派組織のテロも力で根絶するのは容易ではない。

 トランプ氏は国境の管理強化や移民政策の厳格化を主張しているが、新たな差別を生み、分断を助長するのではないか。

 テロにつながる過激思想が、社会の不平等や不公正に根差していることを忘れてはならない。

 「核なき世界」を掲げたオバマ氏と違って、トランプ氏は核兵器を「平和と安定を維持する戦略の基礎をなす」と重視する考えを明確にした。

 国際的な連携が不可欠なのに、米国の孤立ばかりが目立っている。安保戦略からは、地球温暖化対策の記述が消えた。エルサレムをイスラエルの「首都」と認定したことへの非難もやまない。

 日本政府は米国に追従するのではなく、国際協調に立ち戻るよう説得することが重要である。

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