社説

エジプトでテロ 憎しみの拡大防がねば

12/04 05:00

 エジプト北東部シナイ半島で起きたテロは300人以上の命を奪い、大きな衝撃を与えた。

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 犯行声明は出ていないが、過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う武装集団が実行したとの見方が強い。

 犠牲になったのはモスク(イスラム教礼拝所)で祈りをささげていた地域の住民である。子どもも多く含まれていた。非道なテロを断じて許すわけにはいかない。

 シリア、イラクでIS掃討が進み、エジプトなどに戦闘員が流入していると言われている。シナイ半島がISの拠点とならないよう、周辺諸国とともに慎重に対応する必要がある。

 今回のテロはISが異端とみる「スーフィズム」(神秘主義)の信徒を狙ったとみられている。

 ISが信奉するイスラム教スンニ派に属する人たちだ。自分たちと少しでも信仰や考えが違えば、敵とみなし、容赦なく攻撃を加える。ISの残忍さ、狭量さを見せつけたと言えよう。

 警戒を強めなければならない。

 ISはこれまで中東でキリスト教徒やイスラム教シーア派の人たちが集まる施設を標的にすることが多かった。攻撃対象を拡大した可能性がある。

 注意しなければならないのは、テロをきっかけに宗派による新たな対立が生まれることだ。

 平和に暮らしていた隣人同士が宗派の違いによって憎み合い、政情が不安定になる。イラクやシリアで見てきた光景だ。

 エジプト国内でも、キリスト教の一派、コプト教徒を狙ったイスラム過激派によるテロが相次ぎ、両教徒の関係が悪化した。

 同様の対立を同じスンニ派の住民の間にも起こす。それが過激派の狙いではないか。

 エジプトのシシ大統領は国内過去最悪のテロ被害を受け、すかさず「報復」を宣言し、現場周辺の山岳地帯で空爆を行った。

 しかし、エジプト政府の「テロとの戦い」はこれまで大きな成果を上げていない。

 シナイ半島では治安部隊への攻撃が繰り返され、2015年にはロシア機爆破事件も起きた。

 人権団体などからは住民の大量拘束や拷問を非難されている。経済、社会政策の立ち遅れもあり、住民の政府への不信感が根強い。

 無差別な報復を行えば、住民のテロへの反発が過激派ではなく、政府に向かう恐れもある。住民の信頼を得るための方策を真剣に考えなければならない。