社説

出国税 発想が安直すぎないか

2017/11/29 05:05

 政府・与党が、来年度税制改正で、日本から出国する人に課す「出国税」の創設を検討している。

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 日本人を含め1回1人千円以内を航空券の代金などに上乗せして徴収し、訪日外国人観光促進の財源に充てるという。

 今年の訪日客は2500万人を超え、早くも過去最高を更新した。3年後には東京五輪を控えており、観光分野に重点的にお金を投じようとの考え方は理解できる。

 だからといって、国がいきなり新たな税負担を求めるのは安直にすぎる。既存の観光予算ではなぜ足りないのかを国民に丁寧に説明し、理解を得るのが先決だ。

 訪日客ら「取りやすいところから取る」という発想で、拙速に増税を決めてはならない。

 昨年の訪日客と日本人出国者は計4100万人で、1人千円で計算すれば410億円の財源が生まれる。これは観光庁の本年度当初予算のほぼ倍に当たる。

 問題は、税額の根拠や使途があいまいなことである。

 出国税の構想は今年夏に急浮上し、観光庁の有識者会議が9月中旬から非公開で6回議論したにすぎない。今月まとまった会議の提言でも、新たな財源が必要となる施策や費用は示されなかった。

 訪日客の急増に対応するため、多言語による観光案内表示の充実、どこでもインターネットに接続できる環境の整備など、取り組むべき課題が多いのは確かだ。

 ただ国の観光予算は、観光庁以外の省庁を含めてすでに年間700億円が計上されている。

 地方自治体が観光資源の整備に充てるために法定外目的税を設ける例も多い。道も「観光税」創設に向けた論議を重ねており、来月には道民の意見を募る段階だ。

 観光政策には数多くの省庁、自治体が関わっている。国は新たな税負担を求める前に、既存の予算に重複や無駄がないかを徹底的に検証すべきである。

 そうして財源を捻出し、それでもなお不足がある場合に初めて増税を国民に問うのが筋だ。

 出国税を観光目的のみに使う特定財源とする構想にも疑問がある。特定財源が所管官庁の既得権益と化し、無駄遣いの温床となる例が少なくないためである。

 揮発油税などかつての道路特定財源が、税収を使い切るためにマッサージチェアの購入にまで回っていたことは記憶に新しい。

 これら国民の疑念を解消しないうちに、国が新税の創設を論じるのは早すぎる。

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