社説

TPPと農業 道内の影響見過ごせぬ

11/14 05:00

 米国を除く11カ国が「大筋合意」した環太平洋連携協定(TPP)について、道内の農家に不安が広がっている。

 当然だろう。米国抜きとはいえ、関税の撤廃や引き下げによって、安い牛肉や乳製品の輸入が増えるのは間違いないからだ。

 しかも、一昨年の12カ国による大筋合意と同様に、詳細な内容や影響は不明なままである。

 「包括的及び先進的な環太平洋連携協定」(CPTPP)を正式名称とする新協定で、道内農業を維持、発展させられるのか。日本の食料自給率に影響はないのか。

 国会は承認ありきではなく、問題点を徹底的に洗い出すべきだ。 11カ国合意の内容を日米自由貿易協定(FTA)の防波堤に―。政府はこう考えているようだ。

 しかし、協定内容の維持に努めたために、今後の日米協議の行方によっては、一部品目で日本の輸入量が増える恐れさえある。

 これでは「攻めの農政」どころか、生産基盤を弱めかねない。

 その象徴的な例が、バターなど乳製品の低関税輸入枠だろう。

 12カ国合意で日本政府は、加盟国を対象とする枠を生乳換算で7万トンと設定した。輸出に積極的だったのは、ニュージーランド、オーストラリア、米国である。

 この枠が11カ国でも維持される。つまり、7万トンを米国を除く2カ国が埋めることになる。そこに日米FTAで新たな枠が加われば、合計が膨らんでしまう。

 政府は協定内容の「見直し条項」を設けるとしているが、確実に修正できるかどうかは不透明だ。

 11カ国合意を急いだひずみが農業分野でさらに広がることにならないか。明確な説明を求めたい。

 関連産業への具体的な影響も明示する必要がある。

 12カ国による合意後、政府は農林水産物の生産額の減少は1300億~2100億円にとどまるとはじき出した。国内生産量は維持されるという甘い見通しに基づくものだった。

 日欧の経済連携協定(EPA)では影響額の試算すら示していない。生産者の不安を払拭(ふっしょく)すると言うなら、少なくとも説得力のあるデータを提示するのが筋だ。

 道の役割も重要になる。まず、合意に関する詳細な説明を政府に求めるべきだ。その上で、日欧EPAの合意内容も踏まえ、産業への影響を徹底分析してほしい。

 その際、酪農家や畜産農家といった生産者だけでなく、加工業者への目配りも不可欠だ。