社説

TPP大筋合意 疑問だらけの新協定案

11/12 05:05

 米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国による閣僚会合で、議長国を務めた日本とベトナムがきのう、新協定案について大筋合意したと発表した。

 カナダの反対で首脳会合での合意確認が中止されるという不可解な決着である。11カ国の結束はもはや揺らぎ、早期発効は見通せない状況と言える。

 米国が抜けて前提が崩れた協定を、原形に近い形で発効させようという日本政府の発想そのものに無理があるのではないか。

 大筋合意を優先し、国内の懸念を置き去りにした対応も批判を免れない。道内からも要望のあった農業分野の協定内容見直しについては結局手つかずだった。

 いかに「合意」の体裁を整えても、新協定案への疑念と不安は尽きず、このまま受け入れるわけにはいかない。

 新協定案は、12カ国が昨年署名した旧協定のうち、20項目の効力を米国が復帰するまで凍結するとし、関税撤廃・削減の約束は旧協定の内容を維持した。

 TPPのもとの形を維持したまま、11カ国での発効を急ぎたい日本の意向を反映した内容だ。

 だが安倍政権の狙い通り、これがトランプ米政権の志向する2国の自由貿易協定(FTA)の「防波堤」となる保証はない。

 トランプ大統領は先の来日の際にも、TPP復帰を「正しい考えではない」と一蹴している。

 仮に2国間交渉入りで押し切られれば、自由貿易ルールよりも自国産業の実利を優先する米政権が、TPP水準以上の関税撤廃や削減を求めてくるのは確実だ。

 忘れてならないのは、米国抜きの新協定案に対して、他の10カ国が、日本と同様の態度を取るとは限らないことである。

 各国が、旧協定の「高水準の自由化」を受け入れたのは、世界の国内総生産(GDP)の4分の1の米国市場に好条件で進出できる見返りがあったからだ。

 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で米国に厳しい条件を突きつけられているカナダやメキシコ、米国向けの繊維製品の輸出増加の期待が外れたベトナムなど、実態は「同床異夢」である。

 11カ国の足並みがそろわず、発効までに参加国がさらに減る可能性も否定できない。農業関係者の不安も顧みず、なぜ日本が発効に前のめりになるのか。

 政府は何よりもまず新協定案を丁寧に説明し、数々の疑問に正面からこたえるべきだ。