社説

日米首脳会談 直言できる蜜月関係こそ

11/07 05:00

 トランプ米大統領がきのう、安倍晋三首相と首脳会談を行った。

 両首脳は北朝鮮問題で圧力を最大限に高めていくことで一致し、首相は北朝鮮への独自制裁拡大を表明。トランプ氏はテロ支援国家再指定の検討状況を説明した。

 だが、圧力はあくまで北朝鮮に核放棄を促す手段のはずだ。

 米国、北朝鮮は非難の応酬を繰り返し、互いに軍事攻撃の可能性をほのめかしている。圧力自体が目的化して緊張が高まれば、破局につながりかねない。

 圧力をかけつつ、北朝鮮を非核化協議に引き込む道筋を描き、関係国にも働きかけていく―。日米に求められているのは、懐の深い重層的な戦略である。

 そうした状況を考えれば、トランプ氏にある程度自制を促すのも首相の役割だった。しかし、そんな場面はなかったようだ。

 先月、沖縄で起きた米軍ヘリ炎上事故では、日本の捜査権が及ばない日米地位協定の不当さがまた浮かび上がったが、首相は問題提起もしていない。

 直言すべきはしなければ、たとえゴルフで蜜月関係をアピールしようと、真の盟友とは言えまい。

■「一辺倒」でいいのか

 トランプ氏が初のアジア歴訪で最初に日本を訪れたのには、首相側の強い働きかけがあった。

 北朝鮮との対話も重視する韓国、中国との会談前に、圧力強化で日米同盟の結束を示す狙いだが、いま中韓とそんな駆け引きをしているときではなかろう。

 トランプ氏と中国の習近平国家主席は電話会談も含め協議を重ねているのに対し、日中、日韓は首脳の相互往来もままならない。

 対北朝鮮で関係国が連携するためにも、「トランプ一辺倒」の外交でいいはずがない。

 トランプ氏は北朝鮮による拉致被害者や家族と面会した。これも首相の要請に応えたものだが、北朝鮮の非人道性を世界に訴えるだけに終わらせてはならない。

 トランプ氏は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が被害者を帰国させれば「素晴らしいシグナルになる」と注目すべき発言もした。緊張を緩和し、核、拉致問題を包括的に解決するためにも対話が必要だ。

■国際協調を重んじて

 両首脳は今週行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会合に向け、「自由で開かれたインド太平洋戦略」の実現に日米が協力することで一致した。

 太平洋からインド洋に至る海域を一体として捉え、アジアやアフリカの経済成長を取り込み、地域の平和と繁栄につなげる構想だ。安倍首相が提唱していた。

 南シナ海の軍事拠点化を進める中国に対抗する思惑もあろうが、「中国封じ込め」の発想から離れ、ダイナミックな国際協調を進めていくのであれば、各国の賛同を得られるかもしれない。

 そこで気になるのは、トランプ氏が国際協調に反する行動を続けていることだ。

 地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱表明や、イラン核合意の破棄をちらつかせるような対応である。

 トランプ氏は世界の首脳の中でも格別の信頼を首相に寄せているといわれる。そうであれば、国際社会の批判を招く態度を改めるよう忠告する役回りを、首相は担うべきではないか。

■貿易障壁の誤解正せ

 もう一つの焦点だった経済問題について、トランプ氏は対日貿易赤字削減の必要性に言及したものの、具体的な要求は避けた。

 とはいえ、環太平洋連携協定(TPP)から離脱したトランプ政権が、自国に有利な日米自由貿易協定(FTA)の締結に意欲を示していることは明らかだ。

 本音が表れたのが、首脳会談の前に開かれた日米財界人との会合での発言である。

 「日本市場は公平でなく、開かれていない」「日本は米国に何百万台もの乗用車を売り込んでいるのに、米国から日本に輸出される乗用車は事実上、1台もない」など虚実を交えた批判を展開した。

 首脳会談後の記者会見でも「公平で自由、互恵的な貿易関係をつくりたい」と強調した。

 だが日本は自動車の関税を撤廃し、ドイツ車を中心に輸入車の販売も伸びている。米国車が売れない理由を貿易障壁のせいにし、2国間協定を求めるのは的外れだ。

 問われるのは、こうしたトランプ流の一方的主張や要求に対する安倍政権の姿勢である。

 首相は記者会見で、経済問題について慎重な言い回しに終始し、明確な態度を表明しなかった。

 具体論は、麻生太郎副総理とペンス副大統領による日米経済対話に委ねられた形だ。FTAの締結は、北海道にも大きな影響を及ぼすことが予想される。安易な追随は禍根を残しかねない。