経済

中国 進む都市化、激化する都市間競争(2)

2017/11/01 11:52

富士通総研経済研究所上級研究員 趙 瑋琳

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■「頭脳誘致」に注力

 メガシティ(人口1,000万人以上の都市)である北京、上海、広州、深センをはじめ、沿海地域への人口流入が続く中で、各省の省都を中心とする「副省級市」(ハルビン、長春、瀋陽、済南、南京、杭州、寧波、西安、鄭州、成都、武漢など)が先頭に立って、地域への人の誘致、とりわけ“頭脳誘致”に注力している。例えば、内陸にある武漢市の場合、武漢の大学の卒業生たちの定住を図り、戸籍付与や賃貸部屋の提供を行っている。同じ内陸の成都市は「人材新政策12条」を打ち出して、これまでの人材優遇措置を強化しようとしている。

 都市によって、人口流入と人口流出という人口の社会増減の状況が異なり、都市間競争は激しさが増している。中国では今後地域発展の二極化の様相を強めていくことになろう。

北京市大興区で売り出し中のマンションのモデルルーム。大都市で「億ション」は当たり前に
北京市大興区で売り出し中のマンションのモデルルーム。大都市で「億ション」は当たり前に

■新たなメガリージョンの形成

 リチャード・フロリダ氏の自書『クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭』(2008)では、先端的な経済発展はメガリージョン(広域経済圏)に集中するとされる。メガリージョンと言えば、東京を中心とする首都圏が好例である。中国の場合、上海市と周辺都市で構成する長江デルタや、広州市、深セン市を中心とする珠江デルタがメガリージョンとして既に名高い。東北、華北地域では、北京市を中心とした環渤海経済圏の構築も進められている。

 そして、2017年4月に中国政府は、北京市、天津市と河北省の一体的な発展を推し進めるために、河北省に「雄安新区」を新たな新区として設置すると公表した。「雄安新区」を中心に北京市、天津市と河北省が一つの経済圏になり、1978年の「改革・開放」開始直後に指定された深セン経済特区と同様の発展を遂げることへの期待が高まっている。

■広東、香港、マカオが一体化

 中国は地域間の経済発展のアンバランスを改善する目的で、メガシティからメガリージョンの形成を推進する動きが強まっている。そのため、中部都市である鄭州市(河南省の省都)を中心とする「中原経済区」や、南部の広東省と香港、マカオの一体的な発展を図る「粤港澳(広東・香港・マカオ)大湾区」構想も打ち出されている。鄭州市は2000年代に入ってから、沿海地域からの産業移転の受け皿になり、都市のインフラ整備が進んでいる。「粤港澳大湾区」では、ハードウェアのシリコンバレーになっている深センがけん引役となり、広東省全体の強い製造業基盤を活かし、イノベーションに強いメガリージョンを目指している。

中国まるごと百科事典(http://www.allchinainfo.com)の地図をベースに作成
中国まるごと百科事典(http://www.allchinainfo.com)の地図をベースに作成

■進出企業に必要な戦略は

 新たなメガリージョンの形成によって、地域間の格差が縮小し、新たな消費市場が誕生することに対する期待が寄せられている。実際近年、都市部だけでなく農村部も食品よりほかへの支出が増えており、エンゲル係数(家計の消費支出に占める飲食費の割合)が低下し、消費者ニーズの高度化と多様化も進展している。

 今後、中国では新たなメガシティが生まれ、各地域に新たなメガリージョンが形成されると考えられる。それによって、中国の地域間の発展勢力図がどのように変わり、中国経済にどのような影響をもたらすのか、中国の都市化の進展ぶりを注目すべきである。とりわけ、中国の「世界の市場」としての魅力に惹かれ、中国市場に進出する日本企業にとっては、今後地域の発展動向を注視し、有望な地域と市場を見据え、柔軟な現地戦略を練った図ったほうが良いと思われる。 
(この項おわり)

ちょう・いーりん 中国遼寧省出身。2002年大連海事大学卒、2008年東工大院社会理工学研究科修了、博士(学術)。早大商学学術院総合研究所を経て、2012年より現職。麗澤大オープンカレッジ講師なども兼任。
ちょう・いーりん 中国遼寧省出身。2002年大連海事大学卒、2008年東工大院社会理工学研究科修了、博士(学術)。早大商学学術院総合研究所を経て、2012年より現職。麗澤大オープンカレッジ講師なども兼任。

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