社説

2017衆院選 「共謀罪」法 議論仕切り直す機会に

10/12 05:00

 改憲を掲げるよりも、国民の審判を仰ぐべき憲法にかかわる問題があるのではないか。

 共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設した改正組織犯罪処罰法のことである。安倍晋三政権が、先の通常国会で強引に成立させた。

 犯罪の計画段階で広く処罰の対象になる。市民の発言や行動を萎縮させかねず、憲法の理念に反しているのは明らかだ。

 成立し、施行されても、ただ受け入れるわけにはいかない。

 危うい法律の中身は無論、不十分だった政府答弁、委員会採決を省略した国会軽視の成立過程など検証すべき論点は多岐にわたる。

 選挙戦で、与党は有権者に真摯(しんし)に説明する責務がある。

 「共謀罪」法について、安倍首相は必ずしも国民的な理解を得ていないことを認めている。

 ならば臨時国会で、森友・加計(かけ)学園問題などと併せて審議を尽くすのが筋だったが、衆院解散に踏み切った。

 首相は解散を表明した記者会見で、「選挙は民主主義における最大の論戦の場だ」と訴えた。国会質疑や国民への説明をないがしろにして、「民主主義」を持ち出しても口実としか聞こえない。

 「共謀罪」法の施行から3カ月になるが、今なお各地で反対のデモや集会が続いている。

 生活を脅かす監視や捜査が既成事実化することへの懸念が全く拭えていないからだろう。

 テロ対策は重要としても、既存の法律や空港の保安強化などで対処可能との指摘は少なくない。

 「共謀罪」法は本当に必要な法律なのか―。今回の衆院選を、こうした視点に立って議論を仕切り直す好機ととらえたい。

 野党の責任も重い。共産や立憲民主、社民の各党は「共謀罪」法の廃止を主張している。問題点を徹底的に追及する必要がある。

 希望の党は、法案に反対した民進党から多くの候補が「合流」したが、「共謀罪」法に対する立ち位置が判然としない。早急に態度を明確にすべきだ。

 安倍政権は、「共謀罪」法のような国論を二分する問題について、選挙での争点化を避け、勝利した後に数の力で押し通す手法を繰り返してきた。

 特定秘密保護法や安全保障法制も同様である。

 衆院選は、与党の政権運営に、国民が評価を下す貴重な機会であることを忘れてはならない。