社説

衆院選あす公示 看板より中身を問いたい

10/09 10:20 更新

 第48回衆院選が、あす公示される。解散後、構図が揺れ動き続けた中で迎える、異例の選挙戦だ。

 野党第1党だった民進党が分裂し、2大政党を軸とする図式は崩れた。かといって直前に旗揚げした新党は、理念や政策がなお定まっていない。

 結果次第で、国政の枠組みは大きく変わり得る。それは憲法や安全保障といった、国の基盤にも関わってくる。

 きのうの党首討論では各党が、「この国を守り抜く」「国民ファースト」「まっとうな政治」などの看板を掲げた。

 だが各党の公約には、財源の裏付けや実現時期が不明確な主張も目立つ。選挙戦を通じて具体化の道筋を誠実に説明してほしい。

 私たち有権者にも、時代の節目の選挙になるという認識が必要ではないか。各党各候補の政策と政治姿勢に、いつにも増して目を凝らしたい。

■立場見えぬ第3の極

 今回の選挙の構図は「3極」と言われる。

 だがよく見れば「2・5極」、あるいは「2極プラスX」に近づいているとも言えまいか。

 ひとつの極は、自民、公明両党の与党勢力である。

 改憲を巡る温度差を抱えながらも、ともに安倍晋三政権を引き続き支える基本姿勢で一致する。

 その与党と対峙(たいじ)しているのが、立憲民主、共産、社民の野党3党によるもうひとつの極だろう。

 自民党を中心とする現体制の転換を目指して選挙協力の構築を急いでいる。

 気になるのが、希望の党を軸とする勢力だ。希望の小池百合子代表は、「安倍1強の政治を正す」と述べている。

 だが選挙後、首相に誰を指名するのか、いまだに明らかにしていない。選挙結果次第では、日本維新の会や日本のこころとともに自民党との連携を探るのではないか。そんな見方が消えない。

 選挙後の立ち位置が曖昧では「政権交代」の看板も色あせよう。

 選挙協力を進める立憲民主、共産、社民の各党も基本政策で開きがある。政権選択の選挙に臨む以上、政権構想の明示を求めたい。

■改憲の議論は生煮え

 首相は解散にあたり、改憲を争点と位置づけなかった。

 一方で自民党は改憲を公約の柱に据えた。結果次第で発議に動く可能性がある以上、有権者も選挙後を見越した判断を求められる。

 首相は一連の討論で、現行の9条の条文を維持した上で自衛隊を追記する持論に触れる一方、「憲法審査会の中で議論が進んでいくことを期待したい」と述べた。

 首相案には自民党内にも、従来の自民党草案と矛盾するとの批判がある。公明党の山口那津男代表は、自民党内の議論が成熟していないとして、発議について「そういう段階ではない」と述べた。

 首相が言葉を濁すのも、議論が生煮えの現状を首相自身が自覚している表れだろう。これでは党の公約に掲げたからといって、信を問うたとみなすことはできない。重ねて指摘しておきたい。

 消費税を巡っては、10%への引き上げを前提に教育無償化への使途変更を主張する自公両党と、増税の凍結を打ち出した希望、立憲民主党などで立場が分かれた。

 だがいずれも、併せて求められる財政再建との両立の具体策は示せていない。財政の将来像をどう描くのか、説明が聞きたい。

 原発政策でも、再稼働一辺倒の姿勢や「原発ゼロ」の看板だけでなく、再生可能エネルギーへの転換の工程など、エネルギー政策の全体像の提示が求められる。

■民意反映に生かそう

 忘れてはならないのは今回の選挙戦が、野党が憲法に基づいて求めた臨時国会を、首相がいわばすっ飛ばす形で始まった事実だ。

 一切の審議に応じなかった理由はやはり、学校法人「加計(かけ)学園」「森友学園」を巡る問題や、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)にふたをすることにあったと言わざるを得ない。

 為政者の権力を背景に、行政の公平が恣意(しい)的にゆがめられたとすれば、民主政治の根幹が揺らぐ。

 しかし首相の釈明はきのうも「私が影響力を与えたことは証明されていない」と通り一遍だった。

 日報隠蔽は、実力組織の海外派遣という重い判断の是非に関わる情報が国民から遮断され、それを閣僚が見過ごした疑いがある。

 本来ならいま国会で、そういった問題が議論されていなければならないところだ。その国会を軽視し、内閣に召集を義務づけた憲法の規定をないがしろにした首相の判断に、理があるとは言えない。

 だが選挙戦に入る以上、大切なのは民意を国政にしっかり反映させることだ。「政治の世界の離合集散」という冷めた見方ではなく選挙に正面から向き合いたい。

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