経済

中国の国際観光収支 赤字拡大のリスク(1)

2017/10/03 16:38

富士通総研経済研究所主席研究員 金 堅敏

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■観光サービスは全世界輸出の7%を占める

 グローバル化の進展、インターネットの急速な普及及び技術やビジネスモデルの革新等により、国際観光業は新たな発展期を迎えている。国連観光機関(UNWTO)と世界貿易機関(WTO)の統計データによると、最近の五年間で国際観光者数は年平均4.5%の伸びを見せているが、この伸び率は、同時期のモノの貿易(数量ベース)の年平均2.2%の倍以上であり、同時期の世界のGDP成長率2.4% をも大きく超えている。
2016年の国際観光者数は、2015年より4,600万人多い12億3,500万人に達し、観光収入は1.22兆ドル(約135兆円)となった。観光サービスの輸出額は、全世界輸出(モノとサービスの合計)の7%を占めるようになっており、観光業の就職者数は、全就業者数の10%を占めた。

■増加している中国から世界への観光客

 国際観光市場の拡大に中国人観光客は大きな貢献となった。中国の統計資料である「中国旅游業統計公報」によると、2016年に中国のアウトバウンド観光者数は、1.22億人に達し、10年前の2006年の3452万人の3.5倍になった。海外への観光客数の増加とともに観光支出額もうなぎ上りに拡大した。
国連観光機関の統計によると、2012年の中国人観光客の支出額は1020億ドルで米国の835億ドルを超え、世界最大の国際観光支出国となった。その後も急拡大ぶりを見せ、2016年には2611億ドルとなり、国際的な観光支出市場シェアは、2012年の9.5%から2016年の21.4%まで高まった。日本、韓国、台湾・香港やオーストラリアなどの周辺諸国・地域は中国のアウトバウンド拡大から大きく潤っている。
また、2016年の国民一人当たりの国際観光支出額において、中国は、189ドルでドイツの964ドルには遥かに及ばないが、韓国の520ドル、米国の382ドルと比べても拡大する余地は大きいと言える。つまり、中国の国際観光支出はこれからも早いペースで拡大し続けていくに違いない。

データ出所:中国国家外貨管理局
データ出所:中国国家外貨管理局

■中国で宿泊を伴う観光収入は減少

 他方、経済成長への貢献、地方経済の振興、特に雇用創出効果及び文化交流の増進における国際観光産業の役割を考えて、世界大多数の政府は、国際観光客を引き付けるために、国際観光振興計画や政策を策定し、戦略的に国際観光競争力の強化に努めている。
中国では、改革開放以降、外貨の不足や経済成長原動力の欠如といった要因から、自国の悠久な歴史、豊かな自然・文化、低コストの人的資源などの優位性を活かして国際観光客の誘致に全力を挙げてきた。
ただ、その後の外資の大量進出や製造業の台頭、対外モノの貿易の急速な拡大及び国内観光市場の拡大に伴い、中国経済社会における国際観光産業の地位は次第に弱くなってきた。中国の統計によると、受入れ海外観光客数は、2012年の1.32億人から2016年の1.38億人とわずかに増えただけにとどまった。このうち香港・台湾・マカオからを除く外国人観光客は2719万人から2815万人にすぎない。
統計上の香港・台湾・マカオからの観光客は日帰りが多く観光収入の視点からは価値が落ちる。宿泊を伴うオーバーナイト観光客のベースで統計を見ると、観光客数は2012年の5773万人から数年間減り続け、2015年に増加に転じ、2016年は5927万人とわずか増加した。ちなみに、同じくオーバーナイトベースでの国際観光収入(UNWTO統計、中国の国際収支からの引用)は、2012年の500.3億ドルから2016年の444.3億ドルと11%も減少した。

じん・じゃんみん 1985年7月、中国浙江大学大学院修了。同年9月~91年12月まで中国国家科学技術委員会勤務。97年3月、横浜国立大学国際開発研究科修了・博士。98年1月より現職。
じん・じゃんみん 1985年7月、中国浙江大学大学院修了。同年9月~91年12月まで中国国家科学技術委員会勤務。97年3月、横浜国立大学国際開発研究科修了・博士。98年1月より現職。


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