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<芽室 だれもが働けるマチに>上 障害者就労、農業に活路

2017/08/22 05:00
ピーラーでジャガイモの皮を素早くむく障害のある人たち=九神ファームめむろ
ピーラーでジャガイモの皮を素早くむく障害のある人たち=九神ファームめむろ

 農産物の加工場内に「シャッ、シャッ」という音だけが響く。十勝管内芽室町市街から南西へ10キロほどの畑作地帯にある「九神(きゅうじん)ファームめむろ」(中美生(びせい))。7月下旬、障害者の自立を支援するこの事業所で知的、精神の障害の人たちがピーラー(皮むき器)を使い、手早くジャガイモの皮をむいていた。

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■事業所を誘致

 操業を始めたのは2013年4月。町の強い熱意に応え、総菜チェーン店を全国展開する食品製造会社「クック・チャム」(愛媛県新居浜市)をはじめ、道外4社が出資した。

 芽を取り、切ったイモを袋に詰めて専用機で蒸していく。加工した農産物はクック・チャムに送られ、ポテトサラダやコロッケに使われる。職業指導員の浜野達也さん(41)は「視察に来た方は皆さん、作業の速さに『想像以上だ』と目を丸くします」。

 九神ファームは障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型事業所で直接、障害者と雇用契約を結ぶ。ジャガイモ栽培などの農業と農産品加工を組み合わせ、通年雇用を実現した。

 今年1月、加工場を増築した。約340平方メートルと2倍の広さになり、新たに煮豆や切り干し大根も作る。1カ月間の加工品製造量は10トンで、開所当初の5トンから倍増した。

■高賃金を確保

 働いているのは18~46歳の19人で、うち9人は重度判定だ。1日6時間半働き、平均月給は11万5千円。道によると、道内のA型事業所214カ所の平均月給は約6万円で、2倍近い。15年度は道内で15番目の高賃金だった。「障害年金7、8万円と合わせれば、1人暮らしなども可能な額」と、町保健福祉課の有沢勝昭課長(50)は話す。

 榎波(えなみ)愛理さん(22)は3年前、知人の紹介で町内の別の事業所から移ってきた。「働く時間が長くなり仕事も大変だけれど、給料は前より10倍ぐらい増えた。私もお母さんも喜んでいる」

 開設当初、利用者だった川本明宏さん(21)は15年に生活支援員となり、利用者を支える側に回った。これを機に「『障害者だから仕方ない』と逃げる言い訳にしたくない」と、発達障害で取得していた精神障害者手帳を返還した。将来は木を使った物作りを仕事にするのが夢という。

 一般企業に就職した人もいる。昨年末には地域活性化の優良事例を表彰する国の「ディスカバー農山漁村の宝」特別賞を受賞した。

 町が障害者雇用に積極的な企業の誘致を始めたきっかけは07年、障害児を持つ母親からの問いかけだった。「私が死んだら、この子はどうやって生きていくのでしょうか」(帯広報道部の米田真梨子が担当し、3回連載します)

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