都市機能まひ…見えた課題 観光客足止め 行き場なく困惑 スマホ頼み 情報伝わらず/乾電池・電源確保ピンチに

09/12 17:00 , 09/12 20:16 更新

「本日の通常診療は行っておりません」と書かれた紙が貼られた札幌医大病院=6日午後3時ごろ、札幌市中央区

 胆振管内厚真町で6日未明、道内で最大震度7を初めて観測した胆振東部地震。発生から13日で1週間。ライフラインが断たれ、停電や断水で生活機能を失った直後のマチを、くらし報道部の記者が歩き、取材した。非常事態の中、不安を募らせる人たち、懸命に被災後の対応にあたる人たちがいた。記者が見聞きした被害の様子から課題が見えてきた。

■6日午前6時半

 千歳支局の取材を応援するため新千歳空港に向かった。ターミナルビル1階の国内線到着ロビーは、公共交通機関のまひで行き場を失った観光客が床に座り込んでいた。客は空港側が準備したバスなどで札幌市中心部や千歳市内の臨時避難所に移動し、運航再開を待つことになった。

 避難所を訪れてみると、いらだちを募らせ、スタッフに詰め寄る複数の観光客の姿が目に入った。「札幌まで戻っても泊まる所がない。さらに自宅が遠のく」と嘆く人もいた。各地から観光客を迎え入れる新千歳空港と、宿泊施設が集中する札幌。災害にどう備えるべきなのか―。突きつけられた課題は大きいと感じた。(阿部里子)

■午後2時半ごろ

 札幌市役所に設置されたスマートフォンの充電コーナーでは、80口のコンセントに数百人の人が長蛇の列をつくった。「充電は1人30分程度」と掲示板に書かれてあったが、充電が完了するまで待つ人が大半だった。

 公衆電話にも十数人の列ができていた。中央区の主婦は「スマホの充電が切れてしまって。東京の家族に無事だと伝えられてよかった」と少し安心した表情を見せていた。

 情報の入手、伝達の手段として生活必需品となりつつあるスマホだが、行列に並んだ人で、モバイルバッテリーを持っている人は少なく、災害時の備えの重要性を痛感した。(末角仁)

■午後3時すぎ

 札幌市中央区の札医大病院。正面玄関のガラス扉に「本日の通常診療は行っておりません」などと書かれた紙が何枚も貼られていた。

 「地震で停電になったが午後に送電が復旧。基幹災害拠点病院なので自家発電装置が3日間は動かせます。約700人いる入院患者には、負傷者はなく、朝食も献立通り。いつも通りの対応です」と同大事務局企画広報係の担当者は、ほっとした表情を見せた。

 停電の中、自家発電装置の燃料確保や透析患者の移送に奔走した施設もあったと聞く。今回を契機に、命と健康を守る医療機関の災害発生時の対応と対策を検証し、いま一度考える必要があるのではないかと感じた。(編集委員 岩本進)

■午後3時半

 札幌市中央区の公園で、スーツケースを脇に置き、備え付けの椅子に座り、テーブルに寄りかかっている2人の女性を見かけた。神奈川県に住む18歳と19歳の女子学生。2日前から道内の観光旅行中という。この日帰宅する予定だったが、新千歳空港発の飛行機は欠航。JRも運休し、札幌に足止めされた。

 宿泊したホテルは午前11時にチェックアウトを促され、スマホも電波が悪くてつながりにくく、ホテルや避難所の情報が分からない。「土地勘がないので、どこに行っていいか分からない」と途方に暮れた様子だった。災害時、観光客にどうすれば正確な情報を届けられるだろうか。早急に解決すべきテーマだと思った。(片山由紀)

■午後4時20分

 札幌市東区の介護老人保健施設「おおぞら」を訪ねた。すでに停電は復旧していたが、浜守宏明総務部長(47)は「電力供給が長く滞れば、予備の電池が足りなくなる」と懐中電灯用の乾電池の確保に気をもんだという。

 停電中、施設内を歩くのに欠かせなかった明かり。入所者90人を超す規模だから、乾電池は数十本単位で必要だ。しかも必要なのは、需要が少ない単1電池だった。系列事業所から譲ってもらうなどしてしのいだというが、「災害で役立つ道具をどう動かすかも考えなければいけないと、気づかされました」と話す浜守部長の言葉が胸に残った。(大野日出明)