震源域に最大火発 停止次々、全道に連鎖 「想定せず」遅れた対処

09/06 20:02 , 09/07 01:54 更新

地震により稼働を停止した苫東厚真火力発電所=6日午後2時5分(本社ヘリから、金田淳撮影)

 道央地域を中心に6日発生した震度7の地震は、道内全域の停電という未曽有の事態を引き起こした。背景にあるのが、電源の過度な集中だ。地震発生時に道内の使用電力の半分を賄っていた震源域の大規模発電所が一気に停止し、バックアップも機能しなかった。2011年3月の東日本大震災では当時の東京電力が東京湾に集中立地していた巨大電源を失い、域内での計画停電に追い込まれた。電源の集中による災害リスクの教訓を、北電は生かすことができなかった。=北電社長の会見詳報はこちらから=

 地震発生時には、震源域に近い苫東厚真火力発電所(胆振管内厚真町)で3基の発電機が動いていた。合計出力は165万キロワット。地震発生時の需要(310万キロワット)のほぼ半分を1カ所の発電所が担っていたことになる。

 苫東厚真は地震による損傷で発生直後に停止し、全道で使っていた電力の半分が一気に失われた。電気は使用量と供給量が釣り合わなくなると「周波数」が安定しなくなり、周辺機器の故障を引き起こして停電になる。今回は苫東厚真が需給バランスを崩す引き金となり、稼働していた他の火力・水力発電所も自動的に停止。北電は供給する電気を失い、全域で停電が発生した。連鎖して停止した発電所が仮にそのまま稼働を続けた場合、発電用タービンなどの設備が壊れる恐れもあったとされる。

 3基の損傷の程度は大きく、北電は完全復旧について「1週間以上かかる」(真弓明彦社長)としている。7日中には290万キロワットの供給力を確保できるとしているが、早期の完全復旧のめどは依然たたない。

 道内で大型の電源が突然停止した際に本州側から電気を流し入れるため、北海道と本州を津軽海峡の下で結ぶ送電線「北本連系線」は今回、停電のバックアップ機能を果たさなかった。稼働すれば本州から最大60万キロワットの電気を道内に流すことができるが、停電が道内全域に広がり「北海道側に一定の電源があること」(北電広報部)という条件を満たせなかったためだ。

 外部電源がゼロになることを想定していなかったため、電源喪失時に北本連系線を動かすための仕組みはなかったという。

 一方、地震発生時に運転していた火力発電所は6基。砂川発電所(砂川)など別の火力6基は運転中の電源が停止したときにバックアップするため、運転待機中だった。だが、これらが全てすぐに稼働できたとしても発電能力は92・3万キロワット。苫東厚真の3基分(165万キロワット)の出力を補うことはできなかった。

 真弓社長は6日の記者会見で、大型電源が全て喪失する事態について「全発電機が停止することは想定して、さまざまな設備の運用をやっている」としたが、結果的に巨大地震にあっさり破られた形となった。北電火力部幹部は「苫東厚真の3基とも損壊し、長期に停止することは想定していなかった」という。

 北電は来年2月には日本海側の石狩湾新港に天然ガスを燃料に使った出力57万キロワット弱の大型電源が稼働する。これが完成すれば苫東厚真への電源集中は和らぐことになるが、今回の地震には間に合わなかった。

 北電は東日本大震災の発生前は、泊原子力発電所(後志管内泊村)に年間の発電量の4割を依存していた。過度に頼った原発が震災後に停止すると、たちまち収益が悪化。経営危機を招いた経緯もある。

 電源は大型になればなるほど、コスト効率が高いとされる。ただ、突然の災害などで停止すると、その影響は企業の存立をも揺るがす。東日本大震災という教訓を得ながら、大型電源への依存をなおも続けてきた北電。脆弱(ぜいじゃく)性への対処が遅れた経営陣の責任は極めて重い。(宇野沢晋一郎)