<新刊と文庫>「骨を弔う」など

09/02 05:00

<単行本>


◆骨を弔う 宇佐美まこと著
 四国のある町の土中から人体の骨格標本が出たという新聞記事を見た本多豊は、29年前、小学5年のとき、理科室の標本を盗み山中に埋葬した記憶を思い出す。あれは本当に標本だったのか? 豊は、真相を探るために当時の仲間5人と接触を試みる。標本埋葬の発案者、真実子の過去から思わぬ展開が待ち受けるミステリー小説。(小学館 1728円)


◆神曲 地獄篇 須賀敦子の本棚Ⅰ ダンテ・アリギエーリ著、池澤夏樹監修
 随筆家・翻訳家、須賀敦子の没後20年を記念した「須賀敦子の本棚」シリーズ(全9巻)の第1弾。「神曲」の地獄篇から第1~17歌の新訳を収録。須賀の翻訳ノートを基に、まな弟子の藤谷道夫が訳文を完成させ、注釈と洞察に富んだ解説も付した。古典が生き生きとした訳文によって、新鮮な魅力を生み出している。(河出書房新社 3132円)

◆ツチハンミョウのギャンブル 福岡伸一著
 生物学者の著者が「週刊文春」で連載したコラムを加筆・修正して単行本化。ツチハンミョウという地味な虫の、過酷な生存ギャンブルに身を委ねる生き方を描く表題作や、フェルメール絵画の数奇な運命についての「突然、現れた『聖女』」など、科学や美術にまつわる興味深い話が並ぶ。「円周率」の覚え方の語呂合わせを物語化した短編小説も収録。(文芸春秋 1836円)

◆HATE! 松田行正著
 著者はグラフィックデザイナー。「黒人」「黄色人」「ユダヤ人」をめぐる人種差別の歴史を、当時のポスターや雑誌に掲載されたイラストなどとともに詳説していく。無知と根拠なき恐怖心に裏打ちされた差別意識がやがて、憎悪(ヘイト)となり、時代の空気をつくっていくさまが恐ろしい。(左右社 2700円)


◆道具箱はささやく 長岡弘樹著
 2013年に発表した、警察学校を舞台にした短編連作ミステリー「教場」が各社の年間ベスト10に食い込み話題となった著者が、原稿用紙20枚で完結する物語の構築に挑む。限られた字数の中で、作家はいかに伏線を張り、すとんと落とすか。そのお手並みを拝見しよう。何ともトリッキーな短編18編を収録する。(祥伝社 1620円)

<文庫・新書>


◆「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること 鈴木貴博著
 AIの進化がもたらす労働環境の変化を経営戦略コンサルタントの著者が、徹底予測する。IT技術を応用する会計、財務などの無人化、自動運転による運送業界の失業などを解説する一方、10年後でも生き残る仕事も紹介。(PHPビジネス新書 961円)

◆日本百銘菓 中尾隆之著
 胆振管内安平町出身の旅行ライターが、全国の銘菓から100品をカラー写真とともに紹介。道内からは「白い恋人」などの定番と並び、渡島管内七飯町の「はこだて大三坂」(菓子舗喜夢良)も選ばれ、著者の目が津々浦々に届いていることがうかがえる。(NHK出版新書 1080円)

◆くらまし屋稼業 今村翔吾著
 人生をやり直したい依頼人の願いをかなえる「くらまし屋」堤平九郎。浅草の丑蔵親分のあくどさから足抜けしようと金を奪って逃げた子分2人が、追い詰められて平九郎に助けを求めにくる。文庫書き下ろしの時代小説。(ハルキ文庫 691円)




◆死と生 佐伯啓思著
 社会思想家が「死」について論じた月刊誌の連載に加筆。死は絶対的救済とする親鸞の教義やトルストイの「人生論」など、仏教や先人の死生観を引き合いに論考する。死は生の対極にあるものではなく、死や死後の世界を考えることが生の充実につながるという。(新潮新書 821円)

◆生ける屍の死 山口雅也著
 1989年に発表された長編デビュー作の全面改稿版。アメリカ各地で死者の蘇(よみがえ)りという奇妙な出来事が起こる。田舎町で霊園を経営するバーリイコーン一族。相続問題を抱える一族の青年グリンも殺されるが、生き返って自ら真相に迫る。“生ける屍”が事件を追う異色のミステリー。(光文社文庫 上下各842円)