隠れみの

09/01 05:00

熊本県に伝わる民話の主人公、彦一は知恵者でいたずら好き。おなじみのとんち話の中でも、「天狗(てんぐ)の隠れみの」は愉快だ▼着れば姿が見えなくなるみのを、彦一が天狗からまんまとだまし取り、好き勝手なことをする。ただし、調子に乗りすぎて結局は痛い目に遭うのだが▼昔話の世界でも最後に見破られる失敗談として語られることが多いせいか、「隠れみの」は真相や実体を隠す手段にたとえられる。とりわけ悪名高いのは「お役所の隠れみの」と言われる審議会や懇談会だろう▼中央省庁で見かける事例はこんな具合だ。審議会の委員に名を連ねた学者や経済人はもちろん議論はするが、議題の設定から報告書の原案作りまでを事務局の官僚が担う。最終的には原案が追認され、各省が実施したい政策の地ならしに利用される▼時には、1人か2人の「反対派」がメンバーに加えられることもある。その反論は少数意見として報告書に紹介されるが、結論は変わらない。端的に言って出来レースだ▼カジノを含む統合型リゾート施設に関する道の有識者懇談会を何と呼ぶべきか。カジノに反対の識者はいないようだ。2回目の会合には誘致希望の自治体を招いて、候補地選定のような作業をしている。誘致の是非から議論するのが筋ではないか。このままでは「隠れみの」ですらなく、誘致したい行政の「腹話術」と呼ばれても仕方あるまい。2018・9・1