総裁選と改憲論 国民意識と乖離がある

08/23 05:05 , 08/23 09:50 更新

 自民党総裁選は来月7日告示、20日投開票の日程が決まった。安倍晋三首相に石破茂元幹事長が挑む一騎打ちの構図となる見通しの中で、両氏の論争が早くも熱を帯びているのが憲法改定問題だ。

 改憲を総裁選の「大きな争点」と明言する首相は先週、9条2項を維持して自衛隊を明記するなどの党の改憲案を次期国会に提出できるよう、取りまとめを加速させる意向を表明した。

 一方、2項削除を主張する石破氏は首相の性急な手法を批判し、9条より緊急事態条項の制定や参院の「合区」解消を優先すべきだとの考えを示す。

 しかし改憲そのものへの国民の期待は高くはない。国民意識と乖離(かいり)した改憲論議よりも、政権与党として優先して取り組むべき課題は山積しているはずだ。

 首相の発言で見過ごせないのは「いつまでも議論を続けるわけにはいかない」と述べたことだ。

 首相は優位が伝えられる総裁選での勝利を、改憲論議に弾みをつけるテコにしたい思惑のようだ。

 丁寧な議論を尽くして国会や国民の合意形成に努力する過程を軽視し、数の力をちらつかせるような姿勢は到底認められない。

 自民党は3月、首相の主張に沿った自衛隊明記や、緊急事態、合区解消、教育の充実の4項目で条文案をまとめた。しかし9条2項の「戦力」と自衛隊の関係をはじめ、議論は全くの生煮えだ。

 石破氏が9条改定について「国民の理解を得て世に問うべきで、その努力がまだ足りていない」と述べたのは、首相の拙速な進め方への批判としては的を射ている。

 ただ、石破氏が重視する項目も改憲の必要性は認められない。

 大規模災害時に政府に強力な権限を与える緊急事態条項は、乱用によって国民の基本的人権が侵害される危険性が拭えない。

 合区問題を巡って、自民党は石破氏の地元鳥取を含め合区対象の現職の救済を狙い、参院定数を6増する改正公職選挙法を強引に成立させた。まずは党利党略の法改正を白紙に戻すのが筋だろう。

 先月の共同通信の世論調査では次の自民党総裁に期待する政策として、年金、医療、介護39・9%、景気や雇用など経済政策36・0%、子育て・少子化対策30・1%だった。改憲は6・3%だ。

 相手との違いを際立たせるために、国民生活に根差した政策課題よりも改憲を論争の主眼とする。そんな思惑で総裁選を戦ったとしても、国民の関心は高まるまい。