高校球児に勇気与える宮西<大藤 晋司>

07/27 05:00

前人未到の274ホールドを達成した宮西尚生投手=6日のロッテ戦

 ペナントレースは混戦、そして高校野球は代表校が続々決まり、熱い「野球の夏」が到来です。特に夏の甲子園は今年が第100回大会。大きな節目です。

 いうまでもなく、プロ野球選手にとって高校野球はかけがえのない経験。各選手が深い思い入れを持っていますが、ファイターズで「大の高校野球ファン」を自認するのが、宮西尚生投手です。

 「プロ野球より断然テレビで見ますよ、高校野球は。点差が離れている試合でも、いや、そういう試合のほうがしっかり見るかな」という宮西投手。その理由は「客観的に見たら力の差はあっても、一瞬一瞬を必死で向かっていく。それが高校野球の一番いいところだから」と言います。

 今月6日に通算274ホールドの日本記録を打ち立て、中継ぎ投手の頂点に立った宮西投手も「(母校の市立尼崎)高校入学当時は、100キロそこそこの球速しか出なかった」そうです。1学年上に金刃(かねと)憲人投手(元楽天など)という絶対的なエースがいて、その背中を懸命に追うところから、高校野球が始まりました。

 今も同校で指導する恩師の竹本修監督は「金刃がダイヤモンドなら、宮西は石炭。でも石炭は磨くとすごくきれいな、黒くて強い輝きを見せる。金刃に追いつきたい気持ちが、その輝きを生みだした」と宮西投手を評します。

 「宮西は、自分の現在地がよくわかっている投手でした」とも竹本監督は言います。「目指す自分になるために、どういう努力が、どれくらい必要かを把握でき、かつ、自分で決めた努力をやり続ける意志の強さがあった。身体能力が一緒でも、考え方や気持ちの持ち方で、成長の度合いは大きく変わるんです」という話を、現在の教え子たちによくしているそうです。

 「タフな中継ぎの世界で、何度も心が折れそうなことがあった」という11年のプロ生活で、前人未到の領域に到達した左腕の原点がうかがえます。

 宮西投手は毎年、オフは母校での自主トレを慣例にしています。その姿を憧れのまなざしで見つめる現役部員たちに、竹本監督が「でも、入学した時は、100キロぐらいしか出なかったんだぞ」と言うと、皆驚くそうです。「高校球児に勇気を与える存在ですよ」と監督は目を細めます。

 高校球児たちへ、今一番伝えたい言葉は?と私が尋ねると、宮西投手はこう答えました。「あきらめるな。思うようにいかないこともあるかもしれない。けど、やらなきゃ、運も来ないよ」。心に響く言葉です。(大藤 晋司・テレビ北海道アナウンサー)