下魚か、幻の魚か

07/26 05:00

イワシは漢字で鰯。魚偏に弱いと書くのは海における生存競争で弱いからではなく、商品として市場競争力が弱い、つまり安いという意味もあるようだ(別役実著「魚づくし」)▼かつては大量に水揚げされ、「猫またぎ」と呼ばれた。「イワシの頭も信心から」と言えば「つまらないもの」の代表だし、意気地のない人を「イワシの腐ったようなヤツ」と言う。そんな「下魚」の代表も1990年代以降は不漁が続き、「幻の魚」とありがたがられた▼そのマイワシが道東沖で豊漁だ。値段は格安。焼いて良し、煮て良し、揚げて良し。財布に優しい上、たっぷりと脂がのり、美味この上ない▼対照的に、記録的な不漁なのがスルメイカ。ここ数年、全国的に漁獲量の減少が続く。先週の「道新こども新聞週刊まなぶん」では、イカの塩辛を製造する函館市の加工業者が「値段を維持するのが大変」とこぼしていた▼庶民の味方だったサンマやサケも近年は不振が続く。一方、道南ではあまり見られなかったブリの水揚げが急増している。海洋環境の変化に伴う魚種交代か、乱獲による資源量の減少か。いずれにしても海がおかしい▼身近なものがなくなり、初めてそのありがたさに気づくのが人間だ。ウナギはその好例だろう。イカやサンマまで「高根の花」になってしまうのか。丸々と太ったイワシの塩焼きを前に、いささか気持ちが暗くなる。2018・7・26