国民投票法 手続き急ぐ必要はない

07/06 05:00

 衆院憲法審査会がきのう、改憲手続きを定める国民投票法の改正案の審議に入った。

 審議は与党側が法案の提案理由を説明するだけにとどめた。野党の反発に配慮したためで、今国会での成立は見送る方針だ。

 「森友・加計(かけ)」問題はまだ真相が不明で、解決にはほど遠い。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案も問題が多い。

 審議すべき懸案の優先順位を考えれば、先送りは当然である。

 与党側が形だけでも審議入りすることにこだわったのは、改憲への機運を維持したいからだろう。

 だが、改憲そのものが急を要するとは言えない中で、投票手続きだけを先行させる理由は見当たらない。改憲ありきで審議を進めてはならない。

 なお未解決の問題を抱えている法律である。時間を惜しまず、根本の論議を深め、国民の広い理解を得る努力が不可欠だ。

 改正案は商業施設への共通投票所設置、在外投票や洋上投票の制限緩和など7項目。公職選挙法の改正内容に合わせる趣旨だ。

 改憲に反対する共産、社民両党を除く与野党は、いったんはこの内容で大筋合意した。しかし、重要法案をめぐる与党の強引な国会運営に野党が反発し、合意は崩れた形となっていた。

 きのう審議入りした改正案は与党側が一方的に提出した。党派を超えて丁寧な合意形成に努める憲法審査会の慣例にはなじまない。

 自民党は国民投票法改正を呼び水に、野党との改憲論議を進める戦略を描く。3月には安倍晋三首相の意向に沿って4項目の改憲案をまとめたが、国会で議論するめどは立たず、焦りの色が見える。

 自民の改憲案は、法律の改正で対応可能であるなど、必要性に乏しい。いま改憲に弾みをつける正当性は認められない。

 肝心なのは議論の中身だ。

 野党側が求めたテレビCMの規制は改正案に盛り込まれなかった。資金力のある勢力が無制限に広報活動をすることの是非論は取り残されることになる。

 国民投票法は成立当初から「欠陥法」と呼ばれてきた。

 国の基本法を変える投票に必要な最低投票率を決めなくていいのか。投票までの周知期間は180日以内でいいのか。こうした論点は放置されたままになっている。

 投票所新設など細部を論じて審議の実績づくりを狙うのでは不誠実だ。改憲の是非論を含めた根幹の議論を尽くすべきである。