「怪物中田」 肉体改造が結実<浅沼 寿紀>

06/22 05:00

15日のヤクルト戦で本塁打を放つ中田。主将としてバットでもチームを引っ張る

 野球界で「怪物」と称されるスター選手たち。元祖は元巨人の江川卓投手だろう。「平成の怪物」はもちろん松坂大輔投手(中日)。打者部門では、怪物? 怪獣? 「ゴジラ」のニックネームで親しまれた元大リーガーの松井秀喜選手の名が挙がる。では「平成生まれの怪物」といえば、皆さんは誰を思い浮かべるだろうか。

 独断と偏見で申し訳ないが、私は断然、中田翔選手を推したい。唐川侑己投手(ロッテ)と(佐藤)由規投手(ヤクルト)、そして中田は高校時代に「ビッグスリー」と呼ばれた。ドラフトでは、4球団が競合するほどの高い評価。高校通算87本塁打、投手としても150キロを超える豪腕ぶり。輝かしい実績を引っ提げ、鳴り物入りでファイターズに入団した。

 高校生離れした体格、豪快なスイング、その体から生み出される打球の飛距離。同期入団の私は、その身体能力に衝撃を受けた。同じ高卒選手とは思えない。まさに超高校級という言葉がぴったりだった。

 だが、1軍に定着したのは、入団4年目。つまり、順風満帆ではなかったのだ。1年目から、度重なるけがに苦しみ、スランプに陥ることもあり、思うような成績が残せない。毎日毎日、夜遅くまで練習に明け暮れた。打撃マシン相手にバットを振り続けた。世間からさまざまなバッシングを受けることも少なくなかった。だが、そんな逆境をはねのけ、フルスイングを貫く姿は、今でも目に焼き付いている。

 昨季は、打率2割1分6厘、16本塁打、67打点。レギュラーに定着してからは、いずれも最低の数字だった。5年連続で継続していたシーズン20本塁打も途切れてしまった。

 今季は19日時点で、打点はリーグ2位の54打点をマーク、交流戦では、12球団トップの22打点を記録している。持ち前の勝負強さが戻りつつある。順調にいけば、現在は16本の本塁打も、自己最高を更新するだろう。昨季オフの肉体改造とフォーム改良の成果が結果に出ていると思う。

 交流戦を終え、今日からペナントレースが再開される。現在、ファイターズはパ・リーグ2位と好位置に付けているが、これからが本番である。

 主将として、主砲として、チームを引っ張る中田。「初心に帰ってがむしゃらに戦いたい」。覚悟を決めた怪物に迷いはない。ファンと選手が一体となり、球場全体が勝利に向かって突き進む。そんな試合を数多く見せてほしい。(浅沼 寿紀・元プロ野球選手)