夫婦といえども元は他人同士。価値観の違いや相手への不満が積み重なった末に「離婚」の文字が頭をよぎったことがある人も多いのではないでしょうか。しかし一時の感情に流されて離婚届にサインして役所に出してしまうのは得策ではありません。まずは冷静になって離婚後の生計や子どものこと、自分の将来などについて想像してみましょう。「やっぱり離婚した方が幸せになれる!」と思えるなら、後悔しない離婚に向けて準備を始めましょう。

成立させるためには「合意」が必要!

 結婚と同様、離婚にも「合意」が必要です。一方が離婚したくても相手が拒否すれば、原則として離婚はできません。夫婦間での話し合いがまとまらない場合や夫婦間で話もできないほど関係が悪化している場合は,家庭裁判所の「夫婦関係調整調停」を利用し、調停でもまとまらない場合は離婚訴訟が必要になります。

離婚を切り出すのは証拠集めを終えてから!

 家庭裁判所の離婚訴訟で離婚を認めてもらうには、民法で定められた「離婚事由」、つまり離婚を認めてもらうだけの正当な理由やそれを根拠付ける事実を証明しなければなりません《離婚したいという一方の気持ちだけでは認めてもらえないのです!》。そこで必要となってくるのが「証拠」です。特に不貞行為やドメスティックバイオレンス(DV)の場合では、家庭裁判所に離婚を認めてもらうため、さらに、相手に慰謝料を請求するためにも、客観的な証拠が必要になってきます《夫には誰か交際相手がいるはずだ、という「女の勘」や、 大昔に口論になって手をはたかれた等の「曖昧な記憶」では駄目だということです》。
 不貞行為の証拠としては、不倫の現場への出入りの写真や動画などのほか、最近はスマートフォンの普及により、配偶者とその不倫相手とのLINEやメールのやりとりも有力な証拠となりえます。DVの場合は、暴力を受けた直後の傷の写真と医師の診断書が有効です。
 証拠集めの前にいきなり離婚を切り出してしまうと相手が過去の不倫相手とのやりとりを隠滅したり、不倫相手との接触を避けて証拠を押さえられないようにする可能性があるため、早く離婚したい気持ちをこらえて粛々と証拠を集めましょう。自分で証拠を集めるのが難しければ、あるいは、自分で集めた証拠が有効なのか、自信がない場合には、弁護士の力を借りることをお勧めします。

各種取り決めは公文書にする!

 日本で離婚する方法には「協議離婚」「裁判離婚」「調停離婚」「審判離婚」の4つがあり、8割以上のケースが夫婦間の話し合いで合意する「協議離婚」です。ところが実際は「離婚そのものの合意」はできていても、①未成熟子の親権者、②養育費、③面会交流、④財産分与、⑤年金分割、⑥慰謝料などの「各種取り決めの合意」ができていないケースが多いのです。早く別れたい一心で取り決めを後回しにして離婚届を出してしまうと、離婚後の条件交渉は極めて難しくなります。たとえ口約束や念書を交わしていても、相手の転居・失職・転職・再婚などによって養育費が支払われなくなるなどのケースも少なくありません。
 こうした離婚後のトラブルを防ぐためには、離婚に関する各種取り決めを「離婚協議公正証書」や「離婚調停調書」などの公文書として残すことが有効です。家庭裁判所での離婚調停調書作成は、家事調停委員や裁判官のサポートが得られるので、離婚そのものには合意できている場合でも、あえて調停離婚を選択することも有効です。離婚へのスピード優先ならば、一般的には離婚協議公正証書でしょう。

離婚協議公正証書と離婚調停調書の違い
離婚協議公正証書 離婚調停調書
離婚方法 協議離婚 調停離婚
作成場所 公証役場 家庭裁判所
作成費用 公証人手数料など数万円。ただし、弁護士に委任した場合の費用は別途かかります。 裁判所に納める収入印紙と郵券代など数千円。ただし、弁護士に委任した場合の費用は別途かかります。
スピード 両当事者と公証人のスケジュール調整がうまくいけば、すぐに出来る。 調停の申立てから、第1回調停期日まで、おおよそ40日~60日くらい。調停成立には調停期日への両当事者の出頭が必要。

世代別の争点をチェック!

若さゆえのスピード離婚から長い結婚生活の末の熟年離婚まで、世代によって離婚の争点は異なります。自分の現状と離婚後の生活を見据えて条件を交渉し、納得できる離婚条件を勝ち取りたいものです。

20代子どもの親権や養育費が争点に。
専業主婦は安定した収入確保がカギ!

親権はどちらが持つか?

 未成熟の子どもがいる場合は、離婚届を出す時点で親権者が確定されている必要があります。未成年者の親権は母親が持つのが一般的と思われがちですが、家庭裁判所が離婚訴訟で定める場合には、母親の健康状態、それまでの育児状況、(子どもが成長して、ある程度しっかりした意見を出せる年齢に達していた場合には、)子ども自身の意見などによって、父親を親権者と定めることもありえます。また、最近は少子化の影響からか、孫の成長を近くで見たいという子どもの祖父母が間接的に介入してきて揉めるケースも増えています。

養育費はちゃんと払ってもらえる?

 授かり婚などで早婚の場合、家計収入が低く経済的な行き詰まりから離婚に至るケースが少なくありません。夫の収入が低いと十分な養育費を支払ってもらえない可能性もありますから、専業主婦の方は離婚後の子育てと御自身の自活の双方を見据えて収入や住まいを確保する必要があります。

子どもとの面会交流をどうする?

 離婚時に親権争いや感情的なもつれがあると、子どもの面会交流にも「会わせたくない」「会わせてくれない」といったトラブルが起こりがち。親権者を決める過程で細かく取り決めを行うことが大切です。

30代〜40代オーバーローンの自宅が足かせに。
子どもの将来も見据えた交渉も必要!

ローンが残った自宅をどうする?

 預貯金や不動産(自宅など)、生命保険、株式など、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産はそれぞれの収入に関わらず、原則として半分ずつ分配します(財産分与)。厄介なのが住宅ローンが残っているマイホーム。売却して利益が出れば夫婦で分配できますが、オーバーローン(売却してもローンが残る状態)の場合は借入の名義人や保証人が責任を負うことになります。「夫名義で妻が連帯保証人」「夫婦共有名義でローンは二人の連帯債務」などの場合はさらに問題が複雑になるため、専門家に相談するのが賢明です。

子どもの進学、養育費だけでカバーできる?

 子どもの成長とともに教育費がかさむのがこの世代。養育費算定表の金額は公立の小学校〜高校を想定しているため、私立学校や大学については養育費と別に取り決めをしたり、養育費に上乗せを要求するなど、子どもの将来を見据えてしっかりと交渉したいものです。

改訂標準算定表(令和元年版)=令和元年12月23日公表=

50代〜熟年離婚の先に待つ生活は?
退職金や年金のチェックも綿密に!

退職金も財産分与の対象になる?

 退職金は「給与の後払い」という性質があるため、すでに相手の退職金が支払われていて預金として残っている場合は財産分与の対象となります。相手がまだ在職中でも、会社の経営状態や勤務年数などによって「退職金の支払いがほぼ確実」と判断されれば財産分与の対象となる可能性があります。もっとも最近は「転職を繰り返した夫より、一つの職場で定年まで働いた妻の退職金の方が多かった」というケースもありますから、財産分与によって必ずしも女性側が得をするとは限りません。なお、財産分与において、預金の名義は考慮しませんが、結婚前から持っていた財産や相続で取得した財産は財産分与の対象にはなりません。

年金分割を請求できないケースもある?

 年金分割=将来受け取る予定の年金金額の半分をもらえると誤解されがちですが、年金分割制度は「厚生年金保険および共済年金」に限って「婚姻期間中の保険料納付実績」を分割する制度です。「国民年金」や「厚生年金基金・国民年金基金」などは分割の対象にならないため、相手が自営業などの場合はこの制度を利用できません。逆に自分が会社員や公務員で年金受給額が多ければ、相手から年金分割を請求されてしまうため、注意が必要です。

知恵と根気が必要。
専門家のサポートが力になります。

 「離婚は結婚の3倍大変」と言われるほど労力を使うもの。さまざまな交渉や手続きが伴い、こじれてしまうと離婚成立までに数年を要することもあります。長期戦を戦い抜くためには解決するための知恵と根気が不可欠。離婚交渉をスムーズに進めるためには、早い段階から弁護士に相談するのも良い方法です。離婚を円滑に、そして、有利に進めるための方法や注意点などをアドバイスしてもらえる上、相手への対応を一定程度、任せることもできます。
 札幌弁護士会では離婚相談センターを開設しています。インターネットまたは電話で相談日を予約すると、離婚問題に詳しい弁護士が無料で45分間、面接相談に応じてくれます。

一日も早く悩みを解決するために、まずは相談してみてはいかがでしょう。

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札幌弁護士会法律相談センター(面接相談)

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