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無人配車サービスの衝撃

 いまや私の海外出張で欠かせないサービスがある。配車サービスの「Uber(ウーバー)」だ。スマートフォンのアプリ上で自分が行きたい目的地、乗り込む人数を指定するだけで、まもなく見知らぬ誰かの運転する車(タクシーではなく一般の車)が自分が立っている所まで迎えに来てくれる。アプリ上には迎えにくる車種と色、それに運転手の名前が表示されるので、それを頼りに車に乗り込む。運転手とはもちろん初めて会うわけだが、“Hi”の様な簡単な挨拶だけでOK。あとは予め指定した目的地まで連れて行ってくれる。Uber社が提供するカーナビアプリが目的地まで地図と音声でナビゲートしてくれるので、運転手はただその通りにハンドルを切れば良い。アプリは、運転中のコース逸脱や速度超過を認識できるので、運転は常に見張られていると言っていい。もちろん運転手は、Uberに個人情報を登録しているので迂闊なことはしない。目的地に到着したら、“Thank you”とだけ言って降車すればいい。料金は配車を申し込んだ時に予め決まっており、Uberに登録した自分のクレジットカードから引き落とされる。しかも格安だ。ナビゲートも料金支払いもUberアプリがやってくれるので、運転手の役割は本当に運転だけだ。

 Uberが「白タク」配車サービスなのに対して、お隣中国では主に業務用タクシーを対象とした「滴滴出行(Didi Chuxing)」という配車サービスが大人気だ。中国でタクシーに乗ると、うるさいなあと感じるほど頻繁に運転手のスマホから呼び出し音が鳴ることがある。次に乗車するお客様からの配車リクエストだ。2012年6月に創業したばかりのDidiだが、既に中国360以上の都市でサービスを展開している。またAppleの10億ドルをはじめ、名だたる企業がこの新興企業に投資を決めている。UberにせよDidiにせよ、配車サービス如きに何故これほどまで注目が集まるのか?そこには驚くべき理由がある。

 自動車産業は、数十年のうちに大きく様変わりすると予想されている。衝突を回避する自動ブレーキ機能や人の運転をアシストしてくれる自動運転機能はいま既に一部の車種で実用化済みである。さらに未来には、人が運転することなく目的地まで安全に連れていってくれる乗り物も実用化するだろう。そうなると、運転手のいない無人タクシーサービスさえ可能だ。未来の我々は、自家用車を所有する代わりに、この様なサービスが安くつくなら好んで利用するだろう。なお、無人配車サービスでは、運転手の人件費がかからないだけに沢山の台数を稼働させられるが、その際、配車を効率よく行うための「人工知能技術」がどうしても必要となる。逆に言うと、人工知能による賢い配車サービスを開発し普及させた会社が、未来の自動車産業の覇者となる可能性がある。UberもDidiも、確実にそこを狙っているのだ。

 昨年7月に、函館市で新しい会社が産声をあげた。はこだて未来大学発のベンチャー「株式会社未来シェア」である。社長の松原仁はこだて未来大学教授は、昨年6月まで人工知能学会会長を務めるなど、人工知能研究の第一人者として知られている。同社は、配車を通じた未来型交通システム「Smart Access Vehicle (SAV)」の社会普及を目指しているが、これは将来的に無人配車サービスにも繋がるテーマであり、産業界に一石を投じたと言える。この様なベンチャー企業を函館市で立ち上げたことに感謝したい。また、同社の技術は、道内の脆弱な公共交通網の改善に繋がる可能性があり、同社の今後の活躍を一道民として願って止まない。

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