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<若林彩記者が読み解く>魚離れ 刺し身と寿司は例外? 魚屋さんが新業態 冷凍進歩で道産品拡大も

 北海道のお魚、おいしいですよね。

 でも、家で料理するのはちょっと苦手です。

 焼き魚や煮魚は骨や皮が生ごみとして残ってしまいます。夏場はとくに、生臭さが気になります。

 だから、少しスーパーの鮮魚売り場からは足が遠のいてしまっている気がします。

 そんな、私でも入りやすい魚屋さんがあると聞いて、訪ねてみました。

 札幌市営地下鉄東西線の円山公園駅から歩いて5分。マンションが立ち並ぶ住宅街の道沿いに、昨年9月にオープンした「円山うおいち」です。

 一見、カフェを思わせるような外観です。中をのぞかなければ「魚屋さん」にはみえません。立ち止まって、何だろうと看板を見上げる通行人もいました。本当に魚を売ってるの?少し疑いながら、店の扉を開けました。

「魚屋さん」には見えない店構えの円山うおいち
「魚屋さん」には見えない店構えの円山うおいち


 入ってすぐの場所には北海道産の新鮮な魚が丸ごとおかれています。でも、そのスペースはほんのわずか。その先のショーケースには、ずらりと刺し身とすしのパックがならんでいます。

刺し身用の商品がずらりと並ぶ「円山うおいち」のショーケース
刺し身用の商品がずらりと並ぶ「円山うおいち」のショーケース


 新田道也店長(46)は「ここは刺し身とすしがメインのお店なんです」と断言します。

 店内にはすしの弁当がたくさんならんでいます。中でもちらしずしの鮮やかな見た目は、写真映えばっちりです。昼時になるとお客さんが次々に訪れ、あれほどあった弁当はあっという間に売り切れてしまいました。

彩り鮮やかなちらしずしやにぎりずしの弁当
彩り鮮やかなちらしずしやにぎりずしの弁当


 これだけ刺し身とすしに特化したお店です、元々はすし店だったのでしょうか?

 いえいえ、「円山うおいち」を経営する会社は北海道内の約20のスーパーの鮮魚売り場で、魚を一匹丸ごとだったり、切り身だったりで売っています。これまでの鮮魚店のイメージを変えるため、新たに「うおいち」というブランドを立ち上げ、初の路面店を円山に構えました。

 なぜ、刺し身とすしだけの新しいブランドのお店が必要なのでしょう。新田店長は「特に若い方の間では魚食離れが進んでいます。今までの鮮魚店の売り方ではなかなか魚を買ってもらえないんですよ」とその理由を教えてくれました。

 「魚が買ってもらえない」-。鮮魚店の実感をデータで確認してみました。農林水産省の食料需給表によると、国民1人あたりの魚介類の年間消費量は2001年度の40・2キロをピークに減少が続いています。対照的に肉類の消費量はじわじわと増えており、11年度に逆転。その後も差は広がり続けています。魚介類の年間消費量は20年度には23・4キロとなり、約20年で4割以上も減ってしまっていました。


 鮮魚店にはショックなデータです。でも、活路がないわけではなさそうです。ちょっと別の面白いデータを見つけました。


 全国のスーパーマーケットの購買データを調査するショッパーインサイト(東京)がまとめた2021年の生鮮品の購買行動です。新型コロナウイルスの感染が拡大した20年以降、自宅で調理する人が増え、精肉や青果など生鮮品全体の売り上げは伸びているそうなのですが、21年の鮮魚の1人あたり年間平均の購買金額と購買回数は、ともに前年を下回りました。

 ただ、魚介類の購買行動の中で、鮮魚と逆の動きを示していたのが刺し身類でした。購買金額と購買回数がともに前年を上回り、中でもカンパチやサーモンが人気なようです。同社は「コロナ禍で在宅期間が長引いたことで、刺し身のような手軽な食材の需要が高まっているようです」とみていました。

 近年はサンマやスルメイカを中心に不漁が続き、多くの種類の魚介類の価格が上昇しています。それでも、刺し身などを買い求める人は増えているのでしょうか。


 CCCマーケティング総合研究所(東京)が2022年4~5月、全国の16~79歳の2670人を対象に実施した魚に関する調査結果です。「価格が現在より高くなっても食べたい水産加工品」として、すしは46%、刺し身は38%の人が選択しました。ほかの魚料理よりも突出して高い数値で、人気の高さがうかがえます。

 刺し身とすしなら売れる―。商機到来を確信した「うおいち」は、6月、同じ中央区内に円山うおいちの姉妹店となる路面店「うおいちマーケット」とすし店「すしうおいち」を相次いで開店しています。

■若者通うカジュアルなすし店も

 札幌市北区の鮮魚店「the 魚工房」もコロナ禍の20年、市営地下鉄円山公園駅近くに「刺し身専門店 維-つなぐ-」をオープンしました。

 鮮魚店には以前から「刺し身の盛り合わせを作ってほしい」と注文する客が多くいました。長内洋平代表(43)は「魚食離れが進んでいると思っていたけど、みんな本当は魚が好きなのでは」と確信したそうです。

 若者にも気軽にすしを食べてもらおうと、今年6月には、札幌市営地下鉄北34条駅に直結するターミナルビルに、すし店「URBAN鮨SALON TSUNAGU」をオープンしました。

カジュアルな雰囲気の店内ですしや酒を楽しむ来店客
カジュアルな雰囲気の店内ですしや酒を楽しむ来店客


 7月中旬に同店を訪れると、20~40代の来店客がカウンターでビールや日本酒を飲みながら、すしや刺し身を味わっていました。長内代表は「長年、鮮魚店を営んできた目利きと市場の信頼関係があってこそ、いいネタを提供できているんですよ」と胸を張ります

根室管内羅臼町産のウニや鹿児島県奄美大島産の中トロをそろえたすし(時季によって産地や魚は変更)
根室管内羅臼町産のウニや鹿児島県奄美大島産の中トロをそろえたすし(時季によって産地や魚は変更)


 札幌市水産物卸売協同組合理事長の北村勝満さん(68)も「骨がない、皮がない、生ごみも出ない。だから、刺し身やすしの需要は、ここ数年伸びています」といいます。鮮魚の需要は低迷していても、刺し身やすしに加工すれば、魚介類の消費はまだまだ増える余地がありそうです。

 市場の変化は、魚介類の産地の出荷のあり方も変えています。冷凍技術の進歩によって、消費者が好む形での出荷の選択肢が広がっていました。

■不漁が転機、根室から「冷凍刺し身」を全国へ

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