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<デジタル発>人知れず牛を襲う忍者グマ その名は「OSO18(オソジュウハチ)」
釧路管内標茶、厚岸両町で2019年7月以降、放牧中の牛がヒグマに襲われる被害が相次いでいる。今年も今月1日に3頭、11日にも1頭が死傷した。足かけ4年間の被害は61頭(7月14日現在)に上り、うち29頭が死んだ。毛のDNA解析や足跡などから同じ雄グマの仕業とみられているが、これまで目撃されたのは最初に被害が出た19年7月16日の一度きりだ。忍者さながらひそかに動き回り、箱わなにもかからない。地元で「OSO18(オソジュウハチ)」と呼ばれるこの老練なクマと、駆除を試みる関係者の闘いを追った。(報道センター 内山岳志)
■今年最初の襲撃
1日正午ごろ、釧路管内標茶町阿歴内(あれきない)付近を釧路市に向かって車を走らせていると、牧草地に面した道路脇に10台ほどの車が止まり、周囲に十数人の人影があるのが見えた。昨年までのオソによる被害状況と今後の対策について関係者に取材するため、6月29日に標茶町入りし、10人近くに話を聞き終わり、まさに帰路についたところだった。そこは20年に2回、21年にも1回、計5頭の牛が死傷する被害があった放牧地で、2日前の取材初日にも通りかかって写真を撮影していた。
「まさか」と思い、車を止めて降りると、オレンジ色のベストを着て猟銃を持つ複数のハンターが真っ先に目に入ってきた。「標茶町」と書かれた町の公用車もある。牧草地を囲う柵には肩や腹から血を流している牛がつながれていた。まもなく重機が死んだ牛を運んできた。クマによる今年最初の被害現場だった。死んだ牛は腹を割かれ、内臓の一部を食べられていた。
現場は20、21年の連続被害を受け、LEDライトとサイレンで野生動物を追い払うオオカミ型の忌避装置「モンスターウルフ」を町の補助金で設置していた場所だった。それだけに、調査に当たっていた町林政係宮沢匠係長(38)は「対策してきた場所だったのに。起きてほしくないことが起きてしまった。忌避装置は正常に作動していた。オソが装置に慣れてしまったのか、それとも襲われた時にたまたま装置が反応しなかったのか。当時の状況は分からない」と険しい表情で語った。
その後、現場に残された毛のDNA解析から、オソの仕業だと確定した。11日にも約20キロ北側の同町上茶安別(かみちゃんべつ)の放牧地でも死んだ牛1頭が見つかった。雄の行動範囲は広い。足跡の大きさなどから見ても、オソの連続襲撃の可能性が高いという。
■腹部血だらけの牛
「オソ18」。こう命名された由来は1頭目の被害が出た3年前の19年7月16日にさかのぼる。
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